昔はサプライズが好きだった!

崔 梨遙(再)

1話完結:900字

 僕が若い頃の話。その時、お付き合いしていた恋人の響子とドライブデートをした。話題はいつも通り、普通の雑談。しかし、その日は響子の誕生日だった。響子は最初はニコニコしていた。でも、僕は誕生日の話題に触れない。響子は、次第に無口になっていった。響子は、僕が響子の誕生日を忘れていると思ったようだ。そうそう、それでいい。


「今日、なんか機嫌が悪い?」

「別に」

「なんで窓の外ばかり見てるの? いつもなら、もっと会話が盛り上がるのに」

「そうかなぁ? 私、いつも通りやけど」

「それならええけど、何かあるなら言ってね」

「うん……何かあればね」

「やっぱり、今日はあまり喋らないね」

「そんなことないけど」

「なんか、今日の響子はいつもと違うみたいに感じる」

「そんなことないよ」


 ついに響子はふてくされた。僕は、そんな響子がかわいくてたまらなかった。わかりやすいのは、響子の素直な性格が滲み出ている。


 夕焼け、湖岸に車を停めて景色を眺める。本当なら、恋人としてはスゴくいいムード。だけど響子はふくれっ面。もういいかな?


「響子、ごめん、ちょっとトランクを開けてくれへん?」

「えー! なんで? ちょっと備品が無くて、もしかしたらトランクにあるかもしれない。ガラスクリーナーなんやけど」


 響子がトランクを開けた。トランクの中には、花束とメッセージカード。そして花束には小箱が挟まれている。メッセージカードには、


“誕生日おめでとう。君の1番近くで祝えることが嬉しい。これからもよろしく”


そして、小箱にはネックレス。


「崔君、私の誕生日をおぼえてたんや」

「当たり前やないか」

「崔君、ありがとう、崔君、大好き-!」

「少しは機嫌が良くなったかな?」

「うん、誕生日、忘れられてるかと思った」

「勿論、夕食はレストランの予約をしてるから」

「もしかして、あのホテルの最上階の?」

「うん、響子が気に入ってる店だから」

「ごめんねー! あの店、高いやろ?」

「記念日くらい、良い店に行こうよ」

「ありがとう、崔君の彼女で良かった!」

「僕はサプライズが好きやねん」



「私は崔君のサプライズが好きやねん!」







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

昔はサプライズが好きだった! 崔 梨遙(再) @sairiyousai

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

参加中のコンテスト・自主企画