第8話
「…ひっく…すいません、もう…大丈夫です。」
ひとしきり泣いたあと、微かに彼女の声が聞こえ、ゆっくりと身体を離す。
「あの…ありがとうございます…こんな見ず知らずの女の話なんて聞いてくれて。」
「いや…むしろスッキリした。お前がなんで自殺未遂なんてしようとしたのか少し気になってたからな。」
「…実は、何日も前から…施設を追い出された日から…自殺しようって何回もやってたんです。」
「……。」
「でも、何故かいつも失敗して…。」
そう語る彼女の身体には確かに多くの傷跡があった。
それは、手当をした時に不思議に思った点のひとつだった。
明らかに車に撥ねられて出来た傷跡じゃないものも多くあったからだ。
「全てを失った私に…生きる希望なんてなかったから。」
それに…と、寂しげな声で続ける彼女。
「私みたいに自分のことすらろくにわかってないやつが、働けるとも思いませんしね。」
自嘲気味に笑う彼女が、随分と悲しく見えた。
「……とりあえず今日は寝ろ、疲れただろ。」
あまり彼女を暗い気持ちにさせておくのは良くないと判断し、そう声をかける。
「でも…寝る場所とか…。」
「空き部屋がひとつあるんだ。今来客用の分用意するからちょっと待ってろ。」
「……何から何まで、本当にすいません。」
「いいんだよ。気にするな。」
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