第7話

龍side



「…美味しい紅茶を頂けたので、お礼と言ってはなんですが…あなたの質問にお答えします。」



「……。」




女はぽつり、ぽつりとひとつずつ言葉を選ぶように紡いでいった。







…私、幼い頃から孤児院にいたんです。



施設の人に聞いたら、孤児院の前に座っていたそうなんです。



雨の降る中、ひとりで。



親は?と聞いても。



歳いくつ?と聞いても。



名前は?と聞いても。



何も答えなかったそうです。



それからずっとその孤児院で育ちました。



手続き上は引き取り時に4歳ということで登録されていたようなので…今私は18歳になります。



でも本当の年齢は実の所わかっていません。



私も…何も覚えていないので。



そこで、手続き上必要だったものは全てもらいました。



名前は、施設長の苗字を貰って西口蓮花。



親は、養親として施設長がなってくれました。



施設に入ってくるちびっこ達とも仲良しで、結構楽しかったんです。



でも…数日前にいきなり、施設を追い出されたんです、私。







「施設を追い出された…?」



「施設の子供…と言っても私より少し下の子と喧嘩してしまって。よくある話なんですけどね。」



「……。」



「少し話がややこしいんですけど…その喧嘩した相手の子が別の子とまた喧嘩した時に勢い余って刺しちゃったらしいんです。」



「……。」



「そのことを濡れ衣…って言うんですかね。私のせいにされて…。まぁ、施設中から大ブーイングですよ。本当は…そんな言葉じゃ言い表せないくらい罵倒されまくりましたけどね。」



「それで…自殺未遂を?」



「…っ、まぁいきなり飛び出してきたら分かりますよね。」



「あぁ…。」



「結構精神的に参っちゃって…。何せ、仲良かった…信頼してた仲間でしたから…。」



そう言うと女は唇を噛み、俯いた。



「私のせいじゃ…ないのになぁ…。」



そう絞り出した声は震えていて、膝の上で握りしめた彼女の手の甲に雫がひとつ、またひとつと落ちていく。



その姿を見て、意外にも自分の中の可哀想だ、という感情が少し湧いたのか、自然と彼女を抱き寄せていた。



「…っ。」



「辛かったな、よく頑張った。」



頭に手を回し、優しく撫でてやると彼女は糸が切れたように泣きはじめた。

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