望まない生

第4話

蓮花side



目を覚ますと知らない天井が視界に入った。



「また、死ねなかったのか…。」



どうやら手当てもしっかりされているようで。誰かが気がついて救急車でも呼んでくれたんだろうか。



そのままぼんやりと天井を眺めていると、しばらくしてガチャと音が聞こえた。



「目ェ覚ましたか。」



視線だけずらすとスーツを着た男の人が立っていた。



「具合はどうだ?傷が痛んだりとかは?」



「……特に、ないです。」



「そうか。なら良かった。」



私が横たわるベッドの近くに椅子を持ってきてそれに腰かける男性。



「いきなり飛び出してきて驚いたよ。まぁ運転してたのは俺じゃねぇけど。」



「……。」



ばつが悪くなって彼から視線を逸らす。



「お前何歳だ?見た感じ若そうだが…。」



「……分からない。」



「分からない?…記憶飛んだか?」



「初めから…知らないんです。自分の年齢が。」



「……じゃあいいや。そこら辺の話は。ところで家どこだ?送る。」



「……家、ない。」



「……。」



私が答える度に呆れというか驚きというか…眉間に皺を寄せる男性。



だからこうなりたくなかったのに。



なんで私はいつもこう生きのびてしまうのだろう。



「分かった、じゃあついてこい。」



そう言うと椅子から立ち上がり部屋の出口の方に歩いていく男性。



「何してんだ、はやく来い。」



その声に急かされ、ベッドから急いで降りて男性のあとを追った。

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