第5話

「ここ…どこ、ですか。」



「ん?俺の家。」



俺の…家?



随分と広いけど…。



部屋を見渡す限り、どうも一人暮らしと言われて、はいそうですかと納得出来る広さでは無い。



きっと家族がいるんだ…若そうに見えるけど。



「あ、あの…いいです。宿はどうにでもなるので…。」



「あ?別にいいよ、遠慮すんな。もう外も暗いぞ?」



「いや…そうですけど…ご家族にご迷惑おかけしますし…。」



「…ご家族だァ?」



やばい、なんか不機嫌になった。



「そんなもんいねーよ。一人暮らしだしな。」



「………。」



はい、見事なフラグ回収。



っていうかこの若さで(年齢知らないけど。)この広さの家に住めるってどんだけ金持ちなの…。



いや…若く見えるだけで若くないのか…?



「とりあえず座れよ、今なんか飲み物出してやる。」



「あのっ、本当に大丈夫です!お気遣いなく…!」



「いいんだよ、久しぶりの来客だしな。それにお前、仮にも怪我人なんだから黙って座ってろ。」



まあ…それ言われると何も言い返せないのだけれど…。



そう思いつつ、少々不本意ながらもリビングの真ん中にどーんと置かれた黒の革張りのソファに恐る恐る腰かける。



「わっ…。」



腰掛けた瞬間、身体がふわふわのソファに沈んでいく。



凄いなぁ…きっとこのソファも高いんだろうなぁ。



もふもふソファを1人楽しんでいると、キッチンから戻ってきた男性がソファの目の前に置かれているローテーブルにコトンっとティーカップを置いた。



「コーヒーを、と思ったんだがな。この時間だし、カフェインレスのルイボスにした。飲めるか?」



「はい、大丈夫です。」



なんだかよく分からないけど。



湯気の立つティーカップに入ったチェリーカラーの紅茶を口に運ぶと、不思議と肩に入った力がほぐれていくようだった。

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