第6話 もう一回…

入学して10日が経った放課後のこと、

「ゆきむらっちいい加減、

 あたしたちの他に友達作ったら?

 あたしたち学校休むとゆきむらっち詰むよ?」

と、美咲は心配(?)そうにいった。


「私は絶対に幸村くんの近くにずっと居ると

 決めたので、絶対に休みません。

 だけど、私体が弱いので…」

と、玲奈は言い耳元に近づく。


「もし休んだら、家に来てください…」

玲奈は耳元で囁くように言った。


「俺、小中まともに

 女子と喋ったことないから

 なんて喋りかけたらいいのかわかんないだよな。」

幸村が陰キャ談を話す。


(美咲はまだそう思ってないかもだけど、

 玲奈ちゃんは物凄くグイグイ行くな…)

桃華は心の中で思った。


「とりあえず、

 人間あいさつが大切だよ!」

美咲がそう言った。


「おい、本当にお前桜井さんか?」

幸村は真顔で言った。


「失礼なー!」

美咲はそっぽ向いて言った。


「じゃあ、慣れとして

 私のこと、桃華って呼んでよ…」

「え?」

幸村は間が空いて桃華に対して「え?」を放つ。


「い、いや

 私だけじゃなくて、美咲も玲奈ちゃんもだよ?!」

「なんでちょっと焦ってんだよ」

桃華の早口に幸村はツッコむ。


「でも、いきなり女子に

 下の名前で呼ぶってキモくないか?」

幸村はそういうと、


「私は嬉しいですよ!」

と、玲奈は言う。

(そ、そう言うものなのか…)


幸村はどうにかしてこの場を切り抜けようとした。

しかし、

「早く言わないと返さないんだからね!」

美咲はそう言う。

幸村は下を向く。


「わ、分かったよ。

 み、美咲…桃華…れ、玲奈…

 これでいいか?

 あんまり俺を揶揄うのをやめてくれ…」

幸村はそう言い、顔をあげると、


「なんでみんなそんな顔真っ赤なんだよ!

 お前たちが呼べって言ったんだろ!

 そんなにキモかったか?

 もう呼ばねえからな!」

「…」

「なんか言えよ…

 もういいだろ、帰るぞ。」

幸村が帰ろうとすると、

桃華が腕を握って止める。


「も、もう一回言って…」

桃華はそう言う。


「わ、わかったからまた明日な! 

 気をつけて帰れよ。」

そう言って、幸村は桃華の腕を振り払って走った。


「なんだったんだ、あいつら…」

家に帰った、幸村は勉強しながら

ボソッと言った。


「幸村、大変!大変!」

いきなりドアを開け、母の薫が騒ぐ。


「なんだよ、いきなり。」

幸村が聞くと、


「女の子3人が訪ねてきたわよ…

 あんた、痴漢とかして無いでしょうね…」

「するか馬鹿!」


玄関の扉を開けると、そこには

美咲、桃華、玲奈がいた。

すると、桃華がいきなり、


「今日のことはごめんなさい。

 ゆきくんに不愉快な思いをさせたんじゃないかと

 思って…」

と、言った。


「そ、そんなことないよ。

 全然気にしてないし、

 わざわざ誤りに来ないでも」

と、幸村が言う。


「良かったぁ〜」

3人は声を揃えて言った。


すると、後ろから声がする。

「幸村が大変ご迷惑をおかけしました。

 ぜひ良かったら晩御飯食べて行ってください…」

かしこまった薫がそう言った。


「か、母さん!

 そんなんじゃないって!

 この子達はクラスの同級生!」

と、幸村が説明する。


「ということは、幸村のお友達ってこと?」

薫がそういうと、

「いいえ、彼女です!」

(玲奈さん?!なにしてんの?!)

「あのーなんて言ったかしら?」


母が聞き間違えだと思ってもう一回聞く。

「私は、ゆきむらくんの彼女です。」

「ちょっとまてえー!

 いいか玲奈、

 あんたとは付き合った記憶なんか微塵ともないぞ」

幸村は割り込むように言う。


「今、玲奈って言ってくれた…

 嬉しい…」

(玲奈さん?!やっぱこの子話通じない…)


「でも、あんた、

 今まで女の子を下の名前で呼んだのって

 ももかちゃん以外いったけ?」


薫の鋭い質問に対して幸村は、

「あれは別というか…」

と言う。


「まって、ももかってこの桃華?」

美咲は言う。


「確かに似てr…」

「人違いじゃないかなー あはは」

薫が何か言いかけたが、桃華が割り込む。

(まだ私って言う時じゃない…)

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