第5話 若気の至り

「キーンコーンカーンコン」

朝礼の時間のチャイムが鳴る。


「そんじゃあ出席取るぞ。」

担任の先生がそう言う。


「バ バババン」

と言う音と共に、扉が開く。

そこには息が切れた、幸村と桃華の姿がある。

「お、遅れて、すいません…」

幸村が息切れしすぎてほぼ聞こえない声で言う。


「椿と一条だな。

 今回は見逃してやるから、

 次からは気をつけろよ。

 うちの生徒指導の先生怖いぞぉ。」

担任の先生は圧力をかける。


席に座ると、隣の桜井美咲が喋りかけてきた。

「2人揃って、遅刻ですかぁ〜?(笑)

 もしかして、お二人さんって

 そう言う関係?(笑)」

「そ、そんなんじゃないし!」

幸村は顔を赤らめ言う。


幸村は、ふと桃華の方を見ると、

(一条さんの顔が真っ赤…

 一条さん結構嫌がってるんじゃ…)

と、若干ブルーになる。


1時間目が終わり休み時間となった。

(いやー最初の方は、

 先生の自己紹介だけだから楽だなー)

幸村はそう思っていた。

すると、美咲じゃない方向から喋りかけられる。


「椿くんだっけ、?」

喋りかけてきたのは物静かな雰囲気の

夢咲玲奈ゆめさき れいなだった。

小さくて可愛い子だ。幸村はそう思っていた。


「そうだよ!椿幸村!

 夢咲さんだっけ?よろしくね!」

椿はギャルと美少女によって、

前より、女子慣れした感じで話す。


「私の名前覚えててくれたんだ!」

嬉しそうに玲奈は言う。

(か、かわいい)

幸村はそう思った。


「で、なんだけど、

 あの時はありがとうって言いたくて

 ずっと探してたけど、見つからなくて。

 そしたら、たまたまこの学校に居て。」

玲奈はそう言った。


「ごめんだけど、あの時って?」

幸村はピンと来てなかったみたいだ。

「前に、私と付き合ってるって言ってたじゃん!」

「え?」

幸村はものすごいスピードで「え?」が出た。


たまたま通りかかった、

美咲と桃華に話を聞かれていた。

「え?2人付き合ってるの?浮気じゃーん(笑)」

美咲は言った。


「だから、違うんだって。

 私とゆきくんはそんな関係じゃ…」

桃華はまた顔が赤くなった。


「どう言うことか説明してください。

 浮気なんて許した覚えはありませんよ?」

玲奈は怒ったように言う。


「あのー、俺がいつ付き合ってるって言ったの?」

幸村は脳の処理が追いついて無いみたいだ。


「私が、よく分からない人たちにナンパされてた時、

『俺の彼女なんだから、手出すな』って。

 あの時キュンってしちゃった…」

玲奈は顔を赤くして言う。


実は、幸村にはそう言う時期があり、

自分がこの世界で一番いけてると思ってた時期の

話だった。


全てを思い出した幸村は、

「ち、違うんだよ。

 それは絡まれてて嫌そうだったから。

 助けてあげてたって言うか、

 若気の至りって言うか、

 と、とりあえず、その付き合ってるは無効だよ!」

幸村は早口で言う。


「でも、私は本気ですから!」

玲奈は言った。

(だめだ。何言っても無駄だ…)

幸村は諦めた。


美咲が桃華の耳元で何かを言った。

すると、桃華が

「だから違うんだって!」

っといい、どこかに走り出してしまった。


「おい、桜井さん。

 あんまり人をからかわない方がいいぞ」

幸村はそう言った。


「この思い、どこにぶつければいいの…」

と、桃のように赤い顔をした

桃華がトイレの鏡に向かって言った。

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