第2話
……まだ手がジンジンとして違和感があるな。
あれからしばらくの時間が経ったというのに、俺はまだその場で尻もちをついたままだった。
見る人が見れば情けないと思われるのかもしれないが、仕方ないだろう。
少し前……そう、本当に少し前までは本物の銃なんて見た事すら無いような現代人だったんだ。
……とはいえ、ずっとこうしている訳にはいかないよな。
「……このMP5、どうしよう」
俺には扱えないことは分かった。
とはいえ、ここに捨てていく訳にもいかないだろう。
まだ俺の想像でしか無いけど、ここが文明の発達していない異世界だった場合、こんなものを誰かに拾われでもしたら、一気に俺の優位性が無くなってしまうだろうし、俺なんて簡単に死ぬだろう。
それだけは避けなくちゃならない……のだが、これを持ち運ぶのも無理そうなんだよな。
……単純に重いんだよ、これ。
……こんなことなら、ハンドガンとかにしておくべきだったな。
ハンドガンなら、ポケットにバレないように入れることだって……いや、ダメだな。もし何かの間違いで引き金が引かれたら、なんて想像をしてしまう時点でダメだ。
……つくづく俺にこのスキルは合ってないと思う。
「消えてくれ」
天に祈るようにして、俺はスキルを意識しながらそう言った。
すると、本当に俺の手にあったMP5は綺麗さっぱりと消えてなくなった。
「…………マジか」
普通に消すこともできるのか。
……俺にとって都合のいいことに間違いは無いんだし、シンプルにラッキーってことでいいか。
それより、MP5を消せたんだから、次はさっき思いついた通り、ハンドガンを出してみるか。
……ポケットに入れての持ち運びは怖いけど、自由に出し入れ? できることが分かったし、出すこと自体に問題は無いはずだ。
……問題は俺が扱えるか、なんだが、一発くらいはいくら反動が抑えられなくてもどうとでもなるだろう。
……問題は敵が複数出てきた場合なんだが……ま、まぁ、取り敢えずはハンドガンを出して、それを試そう。
そう思い、俺はサプレッサーが装着されたPBというピストルを想像しながらスキルを使った。
すると、本当にサプレッサー付きのPBピストルが俺の手元に現れた。
さっきは反動の事ばかりを気にしていたけど、音も相当だったからな。
そして、また一応辺りを確認してから、その場を立ち上がった俺は両手でキッチリとピストルを構え、今度はフルオートじゃないから、何回か引き金を引いた。
「さっきよりはマシだけど……俺には一発か二発程度が限界だな」
それだって俺は何の訓練もしていない人間なんだから、正確な場所に弾が飛ぶわけじゃないんだ。
……やっぱり、俺に銃火器無双は無理なんだろう。
「はぁ」
確かなため息をその場で吐きつつ、俺はPBピストルを片手に、その場から歩き出した。うっすらと見える森の方に向かって。
別に好きで森の中に入る訳では無いけど、いつまでもここにいる訳にはいかないからな。……見渡す限り草原ではあるけど、この草原は森に囲まれてるみたいだし、森に入らないなんて選択肢は俺には無いんだよ。
……本当はピストルを隠して歩いた方がいいのかもしれないが、何が出てくるか分からない森の中を俺は今から歩かされるんだ。咄嗟に銃口を構えられる方にした方が絶対にいいと思うし、これでいいはずだ。
……よく考えたら、この世界の文明レベルが銃を知らない文明レベルだった場合、人間に出会えたとしても、これを見たところで咄嗟に強力な武器だと判断されることは無いと思うしな。
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