突然異世界に転移した俺はユニークスキル【銃火器】を使って無双……は出来なさそうだから代わりに奴隷に無双してもらうことにした

シャルねる

第1話

「……行ってきます」


 誰からも返事なんて帰ってこない。

 そう分かっていながらも、俺は呟くようにそう言い、学校に向かうために家を出た。


 その瞬間、俺の視界は切り替わり、知らない草原の真っ只中に俺は突っ立っていた。


「……は?」


 何が起き​──


【ユニークスキル、銃火器を獲得しました】


「……は?」


 頭の中に突如流れ込んできた声に更に意味が分からなくなった俺は、つい数秒前と全く同じ声が無意識のうちに口から出ていた。


「……夢だな」


 ただ、そのおかげか、少しだけ冷静? になれた俺はそう判断した。

 だって、それ以外に考えられないし。


 目を閉じ、頬を抓り、夢のくせに痛い思いをしながら、俺はもう一度辺りを見渡した。

 その結果、さっきまでの光景と全く変わることの無い草原が俺の視界には広がっていた。


「……」


 夢じゃない?

 だったら、この状況はなんだっていうんだ。

 どこかに転移した……? 本来ならありえないことだが、日本じゃありえないこの光景が俺のそんな考えを肯定する。

 ……仮にこれがどこかへ転移したんだとして、どこに転移したんだって話になるよな。


 ……真っ先に思い浮かぶのが異世界な辺り、俺はまだ厨二病を抜け出せていないのかもしれない。

 ……でも、ユニークスキルとか言ってたしなぁ。


「銃火器!」


 もしかしたら何らかの銃火器がいきなり出てるんじゃないか? と思った俺は、そう声に出して言ってみたのだが、何も起きることはなかった。

 ……俺が何もイメージをせずに言ったからか?


「えーっと、じゃあ、もう一回、銃火器!」


 今度はパッと思いついた良くゲームで使っていた武器……MP5という銃を想像しつつ、俺はそう言った。

 すると、グリップも何もついていないノンカスタム状態ではあるが、突然MP5が俺の手には握られていた。


「お、おぉぉ、マジか……」


 色んな感情が含まれた言葉だった。

 ここが本当に異世界という可能性が高くなったことや日本に帰れる可能性が限りなく低くなったことだったりに関する色々な感情だ。


「…………まぁ、いいか。どうせ、もうあっちの世界には家族ももう居ないんだからな」


 まるでもうここが異世界で確定したかのような言い方で俺は呟くようにそう言った。


「このスキルがあれば、仮にファンタジーでよくある魔物なんて存在がいても、銃火器でどうにかなる……どころか、無双とかもできるんじゃないのか?」


 そう思うと、これからの異世界生活が一気に楽しみになった。

 ……現実逃避って意味合いがあることを否定する気は無いが、別に楽しみなのが嘘では無いし、問題は無い。


 試し撃ちをしてみるか。

 せっかく手元に本物の銃があるんだからな。

 撃ってみたくなるのが男ってものだろう。


 そう思い、俺は一応人がいないのをちゃんと確認してから、適当な場所に向けてMP5を構え、引き金を引いた。


「お、おぉぉぉぉぉ!?」


 その結果、直ぐに銃を制御出来なくなった俺は、尻もちをついてしまい、直ぐに引き金から手を離した。

 ……え? 何この反動。俺、絶対こんなの使えないんだけど。


 そうして、俺の異世界銃火器無双の夢は一瞬にして儚く散ったのであった。

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