⑪
発音がネイティブすぎて、聞き逃すところだったが、どうやら心配してくれているらしい。だが、英語は一般教養レベルしか理解できていないため、伝わるか不安だ。
「イエス、ノープログレム」
「ん?もしかして、あなた、日本人?」
「…え?日本語が話せるんですか?」
「少しだけなら、私の父親が日本人で、日本に滞在していたこともあるわ」
少しと言うわりには滑らかな口調で、聞き取りにくいといった問題は一切ない。
「それにしても、上手ですね。どれくらい滞在していたんですか?」
「えっと、滞在は一年だけかな、十年も前の話になるけどね。日本語は、訳あって日本について調べたときに勉強したの」
十年前ということは俺が十歳のときか。あまり鮮明な記憶はないが、その頃英語に興味を持った気がする。あれは、なんでだったかな?
しかし、なにはともあれ、俺は喜びを伝えずにはいられなかった。
「こんな島で人に会えただけでも奇跡なのに、まさか日本語で会話までできるなんて、そんな偶然あるんですね」
「…偶然。そうね、私も嬉しいわ」
反応が少し遅れて返ってきた。早口すぎたか?話せても、ヒヤリングまでいいとは限らないし、これからはゆっくり話すようにしよう。
だが、俺たちの現状を鑑みれば、身の上話をしている場合ではないというのが正直なところだろう…。
「ところで、あなたがこの島に来たのはいつ?」
「え?そうですね…。いつから来たかを聞かれると、はっきりとは答えられませんが、俺が目を覚ましたのは昨日の昼間です」
「その言い方は、自分の意思でここに来たわけではない、と捉えていいのよね?」
「そうですね。目を覚ましたら、ここにいました」
「…もう一つ、質問したいのだけど。あなたは、世界一周旅行の船に乗っていた乗船客で、間違いないのかしら?」
なぜそれを知っているのかと思ったが、考える間もなく気付いた。そうだ、こんな島にいるんだから、理由は一つだろう。
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