⑦
そう意気込む俺だが、ゾンビを撃退するための術など持ち合わせていない。もっと、そういうゲームや映画に触れていれば、作戦も思いついたのだろうか…。
そんなくだらないことを、考えていられる状況でもないため、俺は、撃退手段を模索する必要を感じ、一旦距離を置くことにした。
月光に照らされるゾンビから、目を離さないように、後退していく。
なにが有効かはわからないが、刃物がいくつかリュックに入っていたはずだ。少し心許ないが、それで撃退を試みるのは悪くないのかもしれない。
しかし、あれを絶命させることは可能なのだろうか…、いや、その前に近付くことすらできるかの問題が先か…。問題は山積みだが、これはやらなくてはならないことだと、直感が告げる。
俺は、もっと視界の良い場所へと移動を開始した。
『パキッ…』
足元で鳴ったその音は、微量ながらも、静寂に響いた…。俺は動揺しつつも、ゾンビから視線を背けることはしなかった。
これが、好判断であったかどうかは、定かではない。ただ一つわかることは、月光に照らされる小さな光の反射が、こちらに向けられたということだけだった。
その瞬間、俺は直感を頼りに後方へと走り出した。
すでに激しかった動悸は、さらに増していく…。
直感頼りで走り始めたが、そんな中で思い付いたことは、海を経由すれば不自由な足元が進行を阻害し、逃げ切ることができるかもしれないという程度だった。
だが、緊張状態の疾走で足がもつれ、その場に倒れ込んでしまった。
さっきまで、ずっと同じ体勢だったからなのか、足場が悪かったからなのかと、原因に辿り着くことのない無駄な思考に苛まれながらも、後ろを振り向くと、すでに数メートルというところまで、ゾンビは接近していた。
早く逃げないといけないというのは、わかっているのだが、足が思うように動いてはくれない。
ゾンビは、確実に接近してきている。俺は、這いずりながら、海へと入っていく。だが、こんなペースでは、追い付かれるのも時間の問題だ。
必死で進み続け、全身が海に浸かるくらいには進行することができたが、早く立ち上がらなくては確実に助からない…。
『あ、あぁぁぅ…』
背後から、奇妙な呻き声が聞こえる…。恐る恐る振り返ると、あと一メートルというところまで詰め寄られていた。その光景に、俺は逃げる意味を見失った…。
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