⑤
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曖昧な記憶を掘り起こした結果、大体の経緯は思い出せた。海へと投げ出され、意識をなくして海を漂った後に、この島へと流れ着いたということで間違いなさそうだ…。
つまり、俺は無人島にいて、現状助かる手立てが存在していない。あの船が針路通りに進んでいたのであれば、ここは太平洋にある島ということになるのだろうか…。
続いて俺は、背負っていた水々しいリュックを砂浜に下ろすと、ファスナーに手をかける。ゆっくりと開いていくと、当然ながら中身はリュック同様、海水で濡れていたが、利用できるものは少なからずありそうだ。
缶詰系の食料と飲料水。双眼鏡や財布と防水の腕時計、ナイフやハサミなど。そして、タオルも乾かせば、使えるかもしれない。十分とはほど遠いが、ないよりはマシだ。多少生きる希望が芽生え、なんとなく気力が戻ってきたように感じる。
こうなれば生き抜く選択肢も見えてくるが、これではすぐに食料が底をつき、どっちみち助からない。
助けを待つにしろ、島を脱出するにしろ、探索が必要不可欠であることはサバイバル経験がない俺でも理解できる。しかし、島の大きさもわからない状態で無闇に歩き回るのも、良い行いとは言えない…。
今日のところは、近場でなにかないか探してみることにするか。ナイフで木に印をつけていれば、まず迷子になることはないだろう。
そう意気込んで慎重に進んで行くが、これといった発見はない。そもそも、植物に関する知識がないため、どれが食用なのかもわからないどころか、違いすら見分けられない。
しかしそこで、誰が見ても間違いなく食べられると確信できるものが、たまたま目に入った。遠目からは苺に見えたが、駆け寄っていくうちに明確になった。これは恐らくラズベリーだろう。
なぜ、こんなところに生えているのかは不明だが、四の五の言っている場合ではないため、ありがたく頂戴することにした。
一応控えめに、必要な分だけを摘み取り、元の場所へと戻る。
近場を探索していたはずだったが、夢中になって、かなり深くまで来てしまっていたようだ。長い帰り道が退屈だったせいもあり、ラズベリーをいくつか摘んでしまった。
次は、もう少しだけ多めにいただくことにしよう…。
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