③
それだけの企業にでも就職できていれば、俺ももっとまともな生き方ができていたのだろうか…。いや、今は仕事のことなど、考えないで楽しむことを優先させてもらおう。
気が遠くなるほどに長い行列も、次第に進行していき、等々列の先頭まで来ることができた。乗務員と思われる人物に、荷物の確認と、ボディチェックを行うと伝えられ、大人しく従うことにする。そして、意外にもあっさりと部屋のカードキーを手渡され、乗船が許可された。
これには浮ついていた俺でも、流石に違和感を覚えた。まさか、この規模の企画で、こんな簡単に乗船を許されるとは、少し心配になってしまう。
俺がそう感じた理由は、決して旅行し慣れているからなどではなく、俺の手荷物の中に、日常生活で使用するための刃物類が入っていたにも関わらず、指摘が一切なかったからだ。
だが、おそらくこの程度なら大丈夫だという判断なのかもしれない。実際、自分がそう判断して持ち込んでいることを加味すれば、特に深く考える必要もないのだろう。
とりあえずは、荷物を部屋に運ぶため、乗務員の案内に従って自室を目指すことにした。
煌びやかな内装を堪能しつつ、見たことない形の照明に沿って歩いていくと、自分の部屋番号を見つけた。カードキーをかざし、指示に従って手を押し付けると、すぐにスキャンが始まった。数秒待ったあと、完了の電子音と共に重厚な扉が自動で開く。
そうして姿を現した光景は、正に高級ホテルを思わせるような夢の空間だった。高級ホテルがどんなものなのかなんて、知りはしないが…。しかし、これはなんとも素晴らしい旅になりそうだ…。
そのうち、アナウンスによって出港が伝えられ、胸が高鳴った。おそらく今日からの旅は、俺の人生において、一生の思い出として深く刻み込まれることになるだろう。
この旅行の目的地として、最初に巡る場所はヨーロッパになる予定だ。予習も兼ねて、少し調べてみていると、一つの記事に目が止まった。そこには、サイドプラント・イノベーションズがイギリスにも進出していることが書かれていた。
元々は国について調べていたはずなのに、引っかかってくるとは、さすが、世界規模の会社と言ったところだろうか。
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