②
・・・・・
「大当たり〜!」
幸運など、早々訪れるものではない。確かに今日まではそう思っていた。しかし今、回し終えた抽選機の受け皿には金色の玉が転がっていた。
「大当たり?」
階層中に響き渡るハンドベルの音は、自然と道行く人たちの視線を集めた。それもそのはずで、叫ばれたその言葉はその場の誰もが求めた一言だったのだ。
「桐堂春希さん、一等です。おめでとうございます」
意外にもあっさり手渡された景品には、『世界一周の旅』と記されてあった。
世界一周旅行にそれほど興味があったわけではないが、全くないと言えば嘘になる。結論を簡潔に述べると、とても嬉しい。
まさか、たまたま目に止まったチラシを見て、壊れた電子レンジを買い換えるために向かったデパートで、たまたまもらった福引券を使ったら、たまたま一等が当たるとは…。
社会人二年目にして、俺にも運気が回ってきたのかもしれない。
家族の愛に触れたところで、詳細な説明を確認すると、当日はどうやらハワイから専用の船が出るらしい。つまり、当日の目的地はハワイにある港ということになる。
焦りを覚えつつも、こうして問題なく目的地を目指すことができたのだから、終わりよければ、なんとやらだ。
約二週間の休日に、お誂え向きの豪華客船が見えると、すでに気分はリゾート一色に染められた。出航一時間前の乗船口には、すでに三列の行列が連なっており、ことの大きさを知らしめられる。
今回の旅行は、『世界と共存する』というのがテーマらしく、各国の人々と、世界を周ることを目的としている。よって、海外の人や日本人もちらほら確認できた。グローバル化が進む現代に、見事適応してみせたといったところだろうか。なかなか、粋な企画だと感じざるを得ない。
さらに言えば、この大規模な計画が、一つの企業によるものだというのだから驚きだ。
その企業というのが、薬学分野では世界に知らぬものなどいないほどの超有名企業の『サイドプラント・イノベーションズ』であり、献身的なサポートや、各国のボランティア活動なども相まって、いまだにファンを増やし続けているという。
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