第4話 何か起こる予感
「はーい、俺が3年3組の
「俺が同じ3組の
(うわっ俺らの班めっちゃ当たりじゃね⁉女の子どっちもめっちゃ可愛いじゃん)
(男子は両方陰キャっぽいし、ガチればキャンプ中に付き合えるかもな~)
不純、不純だ。よりにもよって3年生リーダーがこんな不純なチャラ男2人組だったとは。
「じゃあ順番に自己紹介してくれる?」
「うちは佐川野々花で~す」
「野々花ちゃんね、よろしく!」
「穂浪こごみです」
「みーみって呼んであげてね」
「ひゅぅ!みーみちゃん可愛い!」
明らかにテンションが上がっている古谷と和田。チャラ男のこういう姿を見ているだけで虫唾が走る。
「えっと、俺が永利安志で、こっちが加島健三です」
「あーね、よろしくよろしく」
(はあっ⁉なんだそのあっさり過ぎる返事は!お吸い物でももうちょっと味があるぞ!)
「な、なんかあの2人、俺たちにだけ冷たいよね……」
健三も違和感に気付いているようだ。だが健三なんかより圧倒的にこの先輩2人の方が怖いし、文句なんか言えるはずもない。
「はーい、それじゃあアイスブレイクもかねて、お昼ご飯にしましょう!」
(我ながらナイスタイミング!1年生の子羊たちの指導者として、中田加奈はさらなる指導力を発揮していくのだった!)
(あの人は相変わらずだな……)
初日のお昼はお弁当が配られて、班ごとに談笑をしながら食べる時間になっている。
だが当然、話は3年生と女子のグループでばかり盛り上がっていた。
「へぇ~野々花ちゃんとみーみちゃんは中学からの同級生なんだ」
「てかさ、2人とも彼氏いるの?男の子と付き合ってたこととかある?」
「え~、いきなりそんなこと聞くんですか~」
野々花の方は割と乗り気だが、こごみの方は少しつまらなさそうにしている。
「…あの、穂浪さんは中学の時なにか部活とか——」
「あーそれ俺も聞きたい!俺たちバスケ部入ってるんだけど、マネージャーと以下興味ない?」
すかさず話を横取りする、もう和田か古谷かどっちかも忘れた陽キャ先輩。外見はさっぱりしているが、心の中を覗けば
(はっ、陰キャ男子が女子と気軽に喋れると思うなよ)
この通り真っ黒なのが見て取れる。
「すみません、私はもう入る部活決めてるので」
「なんだ~じゃあ野々花ちゃんはどう?」
「うーん、女バスもいいけどマネージャーも興味あるな~」
「いいじゃんいいじゃん、うちに来ようよ!」
その後も話は3年生の先輩主導で進み、俺は健三と少し喋るばかりで全然班として仲良くすることができなかった。
そんな初日の夜、合宿所の風呂に入っていた時にそれは起こった。
「そこの友達いなさそうなボッチ君、ちょっといいかな?」
「はい?」
ボッチであることを自覚していたから反応したのではない。肩を叩かれたから振り返っただけだ。
肩を叩いてきたのは3年生リーダーの…確か和田の方だった。
「今日一緒の班だった何とかくんだよね?」
「永利です」
「この後1年生だけで1時間だけ授業があるだろ?その時野々花ちゃんに、寝る前に3年棟の前に来てくれるように伝えてほしいんだ」
さんざん俺たちのことを無視してきて、いざという時は利用しようっていうことか。
今日一日ずっと苛立ちを募らせていた俺は、やや攻撃的になっていた。
「佐川さんに告白しようって言うんですか?出会って初日なのにずいぶん積極的なんですね」
「マジ?お前もしかして人の心読めるタイプ?」
タイプってなんだ。人は普通人の心読めないタイプしかいないだろう。
「いやあ俺いつも恋は一目惚れから始まるっていうか?ビビッと来たらその子しか目に入らなくなっちゃうんだよね」
「先輩イケメンだし、彼女いるのかと思ってましたよ」
「永利くん、結構嬉しいこと言ってくれるじゃないの~。彼女なんて全然いないよ?」
(ま、本当は元カノがヤらせてくれないからフッたばかりなんだけどね。年下の方が言うこと聞かせやすそうだし)
その心の声を聴いてますます腹が立つ。初対面の、高校に上がったばかりの女の子をそんな性的な目で見るなんて。
「先輩は乗り気でも、佐川さんの方はどうでしょうね。可愛いし彼氏いるかもわからないですよ?」
「そこはまあ?俺の魅力で落としてみせるよ」
(入って来たばかりの女子だし、フッたら学校生活送れなくするとか脅せばいけるだろ)
この男はどこまでクズなんだろう。こんな汚い奴が風呂に入ったらお湯まで汚くなりそうだ。
「まあよろしく頼むよ。できなかったら明日どうなるか、わかってるよね?」
ニコッと笑いかける和田。
(上等だ。明日大変になるのはどっちの方か、勝負と行こうじゃないか)
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