『さっそ坊』
やましん(テンパー)
『さっそ坊』
むかしむかし、あるところに、ごくらく山という、中くらいの山がありました。
あたりには、たくさんの生き物が住んでいて、人間もそのうちにありました。
みななかよしで、まあ、多少は、捕ったり取られたりはありましたが、それなりに、楽しく暮らしておりました。
しかし、あるひ、そのバランスが崩れたのです。
巨大なねずみさんが現れて、人間をどんどん狩りはじめたからです。
人間の村人は、全員が集まって、話し合いをしました。
しかし、なかなか、話が付きません。
『東の勇者さまを呼ぼうぜよ。』
『あのひとは、ギャラがものすげく高いずら。』
『南南西の乙女さまがよいのではないか。』
『なんでも、相手をやたら選ぶらしいぞな。都会が好きと聴くぞな。来ないだろう。』
『ならば、南のヒーローさまはいかが?』
『村長をいじめた過去があると聞く😢👂️なあ。』
村長さんは、真っ赤になりました。
というぐあいで、なかなか話がまとまりません。
そうこうしているうちにも、また何人かの村人が、巨大ねずみさんに食べられました。
そこに、ふらりと、ひとりのお坊様がやってきたのです。
お坊様は、村のうどん店で、巨大なねずみさんの話を聞きました。
そうして、村長のところにやってきたのです。
『わらしは、さっそ坊。巨大なねずみさんを退治してしんぜよう。謝礼は要りません。ねずみさんが、わらしの報酬です。』
『はあ? ただですか?』
『ただです。』
『怪しいなあ。此の世で、ただほど危ないものはないと聴きますゆえにずら。』
『お試しあれ。』
『まあ、では、現場にお連れいたしましょう。』
村人たちは、滅多に巨大ねずみさんが現れない昼時に、さっそ坊を、ごくらく山の麓に連れて行きました。
『ぼうさま、にぎりめし、ふつかぶんですら。』
『ありがとう。わらしが消えても、さわぐでない。6日間ねずみさんが出なければ、成功したとおもうべし。』
こうして、村人たちは、お坊さまを残して、去ってゆきました。
その、深夜のこと。
巨大ねずみさんが、さっそ坊の前に現れました。
『そなた。食い過ぎだな。診察してしんぜよう。』
『あい。』
巨大ねずみさんは、大人しく従いました。
『む。血圧が異常に高く、血糖値がむちゃくちゃ高く、中性脂肪が激しく高い。重度の糖尿病である。もう、むりだな。いっしょに、帰ろう。時間はある。』
『あい。』
さっそ坊は、巨大ねずみさんを連れて、どこかに帰って行きました。
それ以来、6日間、巨大なねずみさんは出なかったのですが、村人たちは、恐る恐る、ごくらく山の麓に行ってみました。
そこには、さっそ坊に差し上げたおにぎりを載せていた木箱だけが残されていました。中身はすっかりと、ありません。
『ああ、坊さま、食われたかな。しかし、ねずみはどうなったのか?』
どうなったのか、わからないものの、にどと巨大ねずみさんは現れませんでした。
🐀おわりちゅ
『さっそ坊』 やましん(テンパー) @yamashin-2
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます