第1話 そしてハジマリ
「あ、そうそう灯織、これあげるよ。」
学校からの帰り道、何かを思い出したように弥生はポケットから乱暴に取りだした。
「な! これはもしや
「いや、説明はいらん。興味無い。」
弥生は、
「うんうん。あたしら毎日のように聞かされてるしね。」
と、弥生の横からひょこっと顔を出して笑う桃寧。
「耳にタコができそうよ。」
「もう出来てるよ笑」
私の親友、弥生と桃寧は笑いながらやれやれと言わんばかりの表情を浮かべる。
「えぇ! ひどい! こんなに可愛くて愛らしいのに! てか、何でくれたの?」
何でなのかは分かっているが、わざと知らないフリをして聞いてみる。
「わかってるくせに笑」
「わざとらしー笑」
「へへへ。」
さすがに二人にはバレているようだ。
そんな
「ねぇねぇ聞いて、今日宮本君がね、私に今日の服可愛いじゃんって言ってくれたの!!」
「きゃー!! なにそれ、桃寧もう脈アリじゃん! 早く付き合えよー!」
弥生と桃寧が楽しそうに恋愛話に花を咲かせる。
「……灯織ったら、すぐ黙るんだから。」
「だ、だってなんて言えばいいか分かんなくて。」
苦笑いをしながら聞いていたのがバレていたようだ。
「そうよねー灯織には王子様がいるもんねー。」
「彼氏なんか探さなくたって迎えに来てくれるもんねー。」
「違うよ! そんなんじゃないもん。夢に出てくる人が忘れられないだなんて自分でも意味わかんなくて恥ずかしいもん……。」
「別にこの世界にいないってわけじゃないんだから。どこにいるかも分からないその王子様を愛し続けるなんて一途で可愛いじゃん〜。」
「やめて〜恥ずかしい〜〜!!」
そんな話をしているうちに、いつの間にかもう分かれる道に辿り着いていた。
「じゃーねー!」
「また明日ね!」
「ばいばーい!」
二人の親友と別れて、私は家の方向へとはや足で進む。
振り返れば、私の母校である、小中が混同した校舎と友達の背中が見える。
十一月の中旬頃、私は十六歳を迎えた。
「少し寒くなってきたなあ。」
体を震わせて
北の方に位置するこの「
正月にもなれば町のみんなで雪かきをするのが
(
空は
「
さっきより歩く
「ばーちゃーん!!!! たっだいまーッ!!!!」
「おかえり、灯織。いつもより元気がいいわね。」
「なーにいってんのばーちゃん、私はいつも元気よっ!」
「ふふ、そうだったわね。」
私は高校一年生の、
今日は待ちに待った
「んーで、今日は何の日だと思ってんのッ!」
「朝も言ってたものね。はい、誕生日おめでとう。」
そう言ってばあちゃんは、
「わ! ありがとう!」
(なんだろうな〜!)
ばあちゃんから受け取った
「あ........これ........!」
この三日月の髪飾りは、元々
本当は
それをばあちゃんが
「いいの? ご
「いいわよ。いつまで
「ほんとに!? ありがとー! ばーちゃん大好き〜!」
(結構可愛いと思ってたんだよねー♪)
「ふふ。喜んでもらえてよかったわ。」
ばあちゃんはそう言って静かに
そして夕食の準備を続けるために、キッチンへと戻った。
欲しかったのは
(いやいや、
自分にそう言い聞かせて、私は
(うん! 可愛い♡)
鏡の前でポーズを決めたりして楽しむ。
(あ! そうだ!)
「ばーちゃーん。 これ付けて笹上公園行ってきていい?」
「いいけど、ご飯食べ終えてからにしなさいね。」
「はーい。」
笹上公園とは、私が
公園ではないし、まず公園要素もない。
少し上の方にあって、大きな大きな
私はそこから見下ろす夜の景色が大好きだ。
─────ソレカラソレカラ─────
「ごちそーさまっ!」
ぱん!と胸の前で手を合わせて礼をする。
誕生日のご
このフルートは、私が幼い頃に交通事故で死んでしまったという父と母のもの。
ちなみにこのばあちゃんは母親の方のばあちゃん。
「あら、今日はとっても月が綺麗なのね。」
ばあちゃんが窓を開けると、肌寒い風が私の前を通り過ぎる。
「ほんとだ。すごく綺麗な三日月!」
ささっと玄関に向かい、靴を履く。
「んじゃ、行ってきまーす!」
「……ええ、気をつけてね。」
おばあちゃんは私の見送りをするためにやってきて、手を振りながら私を見送った。なんだか少し元気がなかったような気がするが、気のせいだろうか。
辺りの草をかき分け、大樹の元へ走る。
(なんだか、今日は空気がおかしい気がする。)
木々たちの騒ぐ音が、いつもと少し違う気がしたのだ。
小さな違和感を気にしつつも、私は大樹の元へたどり着くと、近くのベンチに座る。
しかし運動下手な私は着く頃にはゼェゼェ言ってた。
「はぁ、はぁ、はぁ……。」
肺を落ち着かせて吹こうと思っていたその時、奥の方で何かにに呼ばれた気がした。
大樹の更に奥へと足を踏み込んでみる。木々たちの声は更に大きくなり、私を不安にさせる。その先で、私は白く光る何かを見つけた。
(なんだろ。)
ただの好奇心でそれを追いかけた。それは奥へ奥へと逃げて行き、私はただそれを追いかけた。
(あれ、こんな事前もしたような……。)
何かに引っかかるが、何も思い出せない。
ただの気のせいなのだろうか。
何だかあの白い光は急いでいるようで、段々と早く逃げていく。
いつの間にか好奇心は膨れ上がり、その白い光を捕まえてやるという気になっていた。
「つか、まえ……たっ!!」
私はその白い光を手の中で包み込み、そっと開けてみた。
自分の手を開けた瞬間、その光が辺りを囲うほどに大きく肥大し、夜だと言うのに朝が来たかのように照らした。
「えっ? きゃ、きゃぁぁ!!」
そしてその光は、私を包み込んだ。
光に包まれるその瞬間、私は大好きな祖母の声を聞いた。
『行ってらっしゃい』
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