第3話 野暮という他ないだろうし。
「……これで、良いのかな」
翌日、昼下がりにて。
ぼんやり辺りを眺めながら、一人ポツリと呟く。そんな私がいるのは、六畳ほどの一室――図々しくも昨夜から居座っている、エリスの部屋だ。
ただでさえ迷惑を掛けているし、私としては事が済めば速やかに去るつもりだったのだけど……行く宛がないならここにいれば良いと、なんとエリスの方から提案してくれて。
『………………あれ?』
久方振りの、暖かな夜のこと。
そう、呆然と声を洩らす私。と言うのも――決意を固め待ち構えるも、一向に手を出してくる気配がなく……えっと、これはいったい――
……もしかして、自分から脱いだ方が良いのかな? 経験上、自分から脱がせたい
『…………ん?』
一人そんな結論に至り、自身の
『…………すぅ、すぅ』
……いや、寝ちゃってるんですけどこの人。
ともあれ、結局何もしていない――どころか、指一本触れられてもいないわけで。当然ながら、これで報酬を受け取るわけにはいかない。なので、昨夜前払いでくれた代金を返そうとしたのだが――
『――いや、なんでだよ。俺が勝手に寝ただけで、別にあんたが職務を放棄したわけじゃないだろ』
ピシャリとそう言って、断固として受け取りを拒むエリス。……まあ、そう言われてしまえば返せる口実なんてないんだけど。
ともあれ……うん、改めて振り返るとほんと何もしてない。流石に、こんな私でも心が痛……いや、でもこうして置いてくれてるくらいだし、また幾らでも機会はあるだろう。昨日は……うん、きっと思ったより睡魔が強かったのだろう。
……ところで、それはそれとして――
「……随分、綺麗だよね」
そう、一人そんなことを口にする。昨夜、初めて目にした時から思ってはいたけど……失礼ながら、この古びたアパートの部屋には似つかわしくないほどに綺麗な装飾が施されていて。
尤も、そういう目など持ち合わせていないので詳しいことは分からないけど……カーテンからカーペット、お皿や燭台、寝具から陶瓶――そして、そこに生けられている色とりどりの花々に至り、その全てがなかなかに高価なものではないだろうか。趣味……にしたって、この出費を別の――例えば食費なんかに当てれば、もっと充実した暮らしができ――
……いや、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます