恐山48
まりた
そんなダンスチーム
なんか呪術っぽいんですよね、動きが。というのが、わたしたちのダンスチームへのコメントでした。
その場ではなんとか持ちこたえましたが、会場を出るとすぐに副部長のすすり泣きが漏れ、原ちゃんのギャグはすべり、みんな項垂れてしまいました。大会で最下位になった上に、この評価。
「ねえ、いっそ呪術っぽさを極めたらいいんじゃない?」
重苦しい空気しかない帰りのバスで、浅井部長が立ち上がりました。
「シャーマンなんてある意味ダンサーよ、表現のきわみよ」
「よし、今日からアイティーケーフォーティーエイトね」
とわたしが乗って、イタコか、イタコだと場は暖まりましたが「その場合はチーム名は地名じゃないと」と大沢くんが譲らず、名称は一旦保留となりましたが、気持ちは結構明るくなっていました。
近所のオカルトマニアさんのオススメビデオを副部長が借りて来たので、レッスンの合間に見るようになりました。笑って真似ましたが、これが楽しい。意外な全身運動! トランス! 痙攣……のマネ。そう、踊り狂ってイヤなことすべてを忘れるのです。
記憶が飛んじゃってる時があるのと、ある日香坂さんが照れ笑いで告白しました。補欠部員だった彼女の上達はめざましく、表情も実に神懸かり的、ダンス中に漏れるのはまるで知らないひとの声でした。
彼女にひそかな対抗意識をもやしていた原ちゃんも、次第に技巧的な動きを体得し、得体の知れない秘密の言葉を紡ぐようになりました。大沢くんに至ってはもう、説明が難しい。
大会前に骨折して、ずっと休んでいた川崎先輩が泣きながら「チームやめたい」と先生に言ったというのもこの頃です。わたしたちは先輩が見学に来たことも知りませんでした。
そろそろ全体の流れを見たいし録画しようか、という話も時々出ますが、なんとなくまだ、していません。
恐山48 まりた @marita404
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます