ようこそ!子ぎつね亭へ 終
悟が消えていった。
誰もいなくなった扉の先を神さんは微笑みながら見つめていました。
涙をこらえて、また一人ぼっちになる事を我慢しながら見送りました。
彼はこの先いったいどんな世界に行って、どんな人生を送るのか、小雪にはさっぱりこれっぽっちも分かりません。
彼女が出来るのは、ここに訪れたお客様を持て成して笑顔で見送る事だけですから。
小雪は自分自身をとても我儘に思います。
本当は異世界で幸せに暮らすはずの彼らの貴重な一日を奪っておきながら、そんな一日が楽しくてたまらない
それでも小雪は、いつ訪れるかも分からない。
そんな細やかな一日に笑顔で向き合うのです。
太陽の様な笑顔で、精一杯に短い一日を心から楽しむのです。
これは、一人ぼっちが嫌いな神さんの唯一の願いですから……。
◇
これはある異世界のお話。
異世界に行く、誰かが迷い込む宿屋の一夜限りのお話。
――こんこん、こんろろと狐のお宿。
一人ぼっちの女将がお迎えする神のお宿。
ささやかなおもてなししか出来ませんが、皆様も一泊如何ですか――?
こんこんこんろろ狐のお宿 海鳴ねこ @uminari22
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