この世界は機械生命体に支配されたようです

微糖

第1話 目覚めはスクラップの山で


『システムを復元します』


 頭の中でシステム音が鳴り響き、徐々に意識が戻ってくる。


「んん……ここは?」


 周囲の景色がぼんやりと見え始める。あたりは薄暗く、視界に入るのは大きな岩ばかり。ここは、洞窟のようだ。どうやら自分は洞窟の中で寝ていたらしい。半覚醒の中、右腕をゆっくりと動かすとガチャガチャという硬質な音と感触が伝わってくる。


「これは、スクラップか」


 ゆっくりと起き上がり、右腕に感じたものの正体を確認する。それは金属でできた何かの部品だった。だが錆び付いていてとても使えるような代物ではない。それが、自分が寝ていた場所にうずたかく積まれていた。


「俺、スクラップの上で寝てたのかよ。まったく……て、あれ」


 そう言って立ちあがろうとするが、うまく立ち上がれない。思わず自分の左足を見ると、そこには膝から先がなかった。膝下ギリギリのあたりを鋭利なもので切断されたような痕が残っている。


「うわあ。エグい損傷」


 傷跡に触れようと左腕を伸ばして、また気づく。


「って、左手もねえのかよ」


 左腕は肩の辺りからなくなっている。こっちは何か強い力で引きちぎられたようだ。フレームはひしゃげていて左腕に接続されていたケーブルは何本も剥き出しになってぶら下がっている。


「ひどいな、これ。一体どうしたらこうなるんだよ」


 なぜ自分がこんなことになっているのか。不思議なことに全く思い出せない。そもそもなぜ自分がこんなところにいるのか。記憶メモリを掘り起こしてみても以前のことがさっぱり記憶から消えている。


「記憶喪失?」


 これほどひどい損傷だ。その際にメインシステムにもかなりの衝撃を受けたに違いない。そのため記憶メモリの復元がうまくいかずに消えてしまったのかもしれない。


「いや、そうとしか考えられないな。というか、この状況を見るに俺は廃棄されるところだったのか?」


 周りはスクラップの山だ。そして自分はその中に捨てられていた。普通に考えてその結論に至るのが自然だろう。


「でも、奇跡的に再起動できたってことかな。これ、めちゃくちゃラッキー?」


 俺はどうやら九死に一生を得たようだ。記憶はさっぱりないけれど。



 

 

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