第4話 再発
――殺すという言う声が聞こえる――
それはあまりにも想定外な、身体が凍りついてしまう程の告白でした。
長女が学校を休みがちになり。
TVを見ている眼にも生気がなく。
期末試験があるという日に休んだと連絡を受けた私は会社から午後休を貰い、家に帰って弁当を食べることにしました。
妻が長女に声をかけると予想外にもあっさりと部屋から降りてきて食事を始めたので、
具合が悪いんか? と尋ねると長女は黙ったまま。
学校行きたくないんか? と尋ねると、小さく頷きました。
食事を続けていると、ゆっくりと娘は語り始めました。
次第に娘の目頭と鼻が赤くなります。
嗚咽し、詰まりながら、苦しさを吐露し始めます。
陥ったのは前と同じ状況。
身体が冷えたのか震え始めた娘にミルクを温めてやり。
私は今朝妻にお願いしたことを実行して貰おうと密かに合図を送りました。
妻が娘を抱きしめます。
娘が妻の胸に顔を埋めて大泣きを始めました。
暖めたミルクを娘の前に置くと、
身体が、動かない、
と言い
私が口元に運ぶと娘は、一口だけ飲み込みました。
妻が娘の手首の傷に気づき叱咤します。
「判っているけど・・・・・・『殺す』って言う声が聞こえるの!」
娘の意外な言葉に私は愕然としました。
妻と娘がよく学友の話をしているのを横で聞いていたので、そんなことを言う人物は思い当たりません。
娘も誰の声か判らないと言います。
遂に幻聴が・・・・・・
思っていたよりも深い闇に囚われてしまった娘に、私は言葉が出ません。
しかし娘は殺されることを恐れているわけではありませんでした。
私を、殺した人はきっと、苦しむ。
そんな、苦しみを、与えてしまう、自分はきっと、「悪」で、
だから、私は自分で、自分で自分を、殺さなくては、ならないの、
だけど・・・・・・。
・・・・・・だけど何をやっても、死ね、ないの!
絶望という名の闇が覆い
視界が霞みました。
恐らく娘はもう、昔の彼女には戻れません。
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