第3話 雪の妖精

[side:スノーラ・シマリィ]


 私は結構すごい。

 敵はみんな氷像にして氷狼たちに破壊させる。

 人にいっぱい褒めてもらえた。雪の妖精なんて言って褒め称える。それなのにどうして?


 私は自国の褒めてくれた仲間人間に攻撃されている。

「何が雪の妖精だ!出ていけ!!」

「二度と帰ってくるな!!!」


 分からない。どうして襲われるのか。雪の妖精も仲間たちが雪が舞う中で敵を殺戮する姿を見て呼び始めたものだし、私が名乗っているわけじゃない。

 私の得意な氷の魔法は通じない。氷狼たちも炎で溶かされる。

 炎はダメ、氷系統の魔物と融合しすぎたせいで雪や氷点下の中じゃないと生きれなくなった。

 私を庇うため、親友のユーヴィーが燃やされた。

――生きて

 それがユーヴィーの願い。



 命からがら国外に逃げることができたけど、背中にあった羽は焼かれて一瞬で崩れて消えてしまった。

 逃げ込んだ山には命がない。ここなら人が住めないはず。だから襲われない。

 ここに拠点を作ることにした。


 1年経ったある日、氷狼が雪の中で凍死している少女を発見した。

 急いで、氷狼に近辺を探らせて、村の場所に雪が降らないように移動した。



 それから25年後、警戒に出していた氷狼が生きている人間の少年を発見した。なんで来たのか聞かないといけない。

 もう二度と追いかけ回されたくなかった。


 長く人と話すことがなかったからか上手く聞き出せない。お腹が減ったみたいなので適当に彼が持っていた野菜と氷と塩を入れて氷狼に渡した。


 戸惑っているみたいだけど、食べた。あんなに適当な料理なのに彼は思わずという感じで「美味しい」と口にした。嬉しい。


 その後、彼は聞いてもいないのにここに来た理由を話してくれた。ありがたい。私は関係なかった。こんなところに山神様なんていない。それからなんか住みたそうにしているから許可してあげることにした。


 一年くらいはユートの態度は堅かった。それでもだんだん砕けて、私も少しは話せるようになってきた。


 それから三年後、ユートは唐突に告げた。

「村に帰ることにするよ」


 何を言っているのか分からなかった。ここ住みにくかった?不便だった?氷狼たちに遠征させることで食料は尽きていない。


「ん!どうして?」

「生贄が意味がないってことを伝えなくちゃ。だってほら、僕たちがお供物を食べているのに村は雪が降らないし、作物も取れているだろう」

「――ん、それは……」


 それは、私が降らないようにしているから。でもそう言えなかった。私がはじめに見落としていたせいでユートは生贄に出されたんだから。


「帰ってくる?」

「ああ、伝えたら帰るよ。氷狼を貸してくれるかい」

「ん」


 不安だ、ユートが帰ってこないかもしれないと思うと胸が締め付けられるように痛くなる。氷狼を十匹くらい用意しよう。こんだけいれば無事なはず。

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