虫とは人類・鳥類・獣類・魚類以外の小動物を指す

◆ 


 幾多の戦争により、世界樹が燃え、灰となった。それにより、樹に秘められていた魔力が世界に散らばり、樹に最も長く住んできた者達にその魔力が降り注いだ。それは、虫であった。散らばって尚膨大なその魔力は、虫達を巨大化させるに至る。人類は悟った。我々の敵は人間ではないのだと、敵は虫達なのだと。

さあ、今こそ立ち上がれ!来たる虫との戦いのために……!


 というのがこのゲームのあらすじで、プレイヤーは世界を守る為召喚された…という設定だ。虫が巨大化…なにそれ、超面白そうじゃん。メガネウラとかデカくなったらどうなるんだ。メガメガネウラにでもなるのだろうか?


「何か大事なことを忘れている気がする…が、まあいいか」


 VRヘッドギアを装着、ゲームのカセットを読み込ませ、起動する。プロローグが流れ、タイトルが出て……?「このゲームでは虫が大量に描写されます。個人によっては不快感を催す可能性がありますが、よろしいですか?」、だと?大いに結構。「はい」を選択。利用規約やら何やらに同意し、VTECアカウントでログイン。少し前にアカウント作らされておいて正解だったな。……そしてキャラメイク画面に移る。まずはジョブ選択だ。


「結構種類あるな……とはいえこれ一択だな」


 迷わず魔法士【氷使い】を選択。なんでかって?虫をシメるなら冷やすのが一番だからだよ。ホントはがあればいいんだけど…は劇物だからな。ゲーム内に存在しているか怪しい。


「プレイヤーネーム……そうだな、「ライラック」でいこう」


「見た目はそのままでいいや、顔が知られても別に問題ないし」


 そうして「ライラック」はキャラメイクを終え、ゲームの世界へと飛び込んだ。


「巨大オオクワガタを捕まえてテイムしてやらぁ!」








(…これは完全に予定を忘れられたな)


 そもそも向こうから誘ってきたものであるため、彼にとって然程困ることではないのだが…

直前になれば乗り気になるというもの、意外とやる気を出していたために、少々落胆する。


(アイツ、結構突発的な部分あるんだよなぁ……ま、それで助かったこともあるんだけど)


(今頃家に帰って早速始めてそうだな。仕方ない、帰って新作一緒にやるか!)


 予定変更。急遽ゲームをすることになった。








 森の中の拠点らしき場所にスポーンする。キャンプ用のテントのような見た目だが、その割に結構頑丈そうだ。

そして、まず最初にやることと言えば。


「ステータス確認…!」


ーーーーーーーーーーーー

ライラック Lv:1【LvUPまで残り:10EXP】

・魔法士【氷使い】


【ステータス】

HP【体力】:20

MP【魔力】:10

ATK【物理攻撃力】:10

MAT【魔法攻撃力】:10

DEF【物理防御力】:10

MDF【魔法防御力】:10

AGI【敏捷性】:10

INT【知性】:10

LUC【幸運】:10


STM【持久力】:100(MAX) 1%↑/sec


残存ステータスポイント:100


【装備】

右:普通の杖

左:普通の魔導書

頭:無し

胴:普通のローブ

腰:普通のローブ

足:普通のブーツ

アクセサリー:無し


【スキル】

・アッドスペル Lv:1


【称号】

・駆け出しバグハンター


所持金:1000リテス

ーーーーーーーーーーーー


 ステータスポイントは後で振るとして……感心するのは金の単位だ。

リテス…恐らくヌムリテス、貨幣石の事を指しているのだろう。成る程、流石虫を題材にしたゲームなだけある。


「で、えーと称号?……駆け出しバグハンター……これだとデバッガーみたいにならないか?いや、そういう意味も含んでいるのか?」


 コンピューターにおける「バグ」とは、システム上の不具合という意味なのだが、それの語源には今から何十年前だったか、初期の頃のパソコンに蛾が入り込んで故障したから、という説がある。

つまりこのゲームも「バグ」が「バグ」を引き起こしたりするんじゃないか?

……本題から逸れてしまったな。考察は後でいい。


「取り敢えずステータスポイント振るか……地味に物理と魔法で別れてて面倒臭いな」


「MPとMATに30ずつ振って…HPに10、後は残りに5ずつ振るか」


 でもなぁ、あんまりステータスを均等に上げると器用貧乏になりがちだからな……

虫で例えるならケラだ。ケラの七つ芸という言葉があるのだが、それは良く言えば万能、悪く言えば器用貧乏、ということ。ステータスビルドの方向性を早めに決めなければそれになりかねない。


「まぁいいや、まずは実戦といこう」


 拠点を出発し、森の奥へと歩みだす…!

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