第6話 ハコ
缶の中身を僕は恐る恐る空けてみた。
そこにはビー玉やおはじきなど女の子がよく遊んでいるものが入っていた。
「これが…大事なもの?」
人それぞれに大事なものがあって…たとえビー玉やおはじきだったとしても大事なものには違いない。僕は缶を閉じようとした…そのとき蓋にくっついていた紙が床に落ちた。
僕は拾ってその紙を見た。写真だった。
男性と女性…あとは女の子が写っている写真。
「おばあさん、この写真は?」
「あー、懐かしいね。優子ちゃんとそのお父さんとお母さんだよ」
「…ご両親…とこれが…彼女……」
「優子ちゃん…今は大きい病院にいるんだって噂で聞いたよ。引っ越したのもそのせいだって」
僕は驚いた。
「夢に出てきたのはこれを届けてほしかったかもしれないね…健くんの」
おばあさんの言葉に更に驚く。
「なんで…僕の名前………」
「良かった…大きくなったからもしかしたらと思ってたんだ。山田さんのところの健くんだろ?幼い頃住んでいたんだよ…幼すぎてきっと覚えてないんだろう」
僕が住んでいた…場所……。僕は動揺して箱にもう一度目をやる。もう一枚紙が入っていた。
それを見ると女の子と男の子の写真…裏には薄っすらと【優子・健】と書いてあった。
忘れていたんだ…僕は…ここにいた。
優子ちゃん…優子ちゃん…!
その時『また会えるよ!泣かないで!約束』という言葉が頭に流れ込んできた。約束…この言葉が妙に頭を巡った理由がわかった気がする…
僕はここに住んでて…引っ越しをするときに優子ちゃんと約束したんだ…また会おうね…と。
僕は行かなければいけない。
「おばあさん…あの頃のことは思い出せないけど会いに行かなきゃ…!どこの病院か分かりますか?」
「ここらへんだと2駅先の大医学病院だと思うよ。詳しいことは分からないのだけど…すまないね」
悲しい顔をしたおばあさんの肩に手をのせ僕は微笑む。
「大丈夫ですよ。僕届けてきます!」
「うん…気をつけて…」
僕はおばあさんに一礼してそのまま駅へと走っていく。まだ時刻表には2駅先まで行く電車がある。
ホッと胸をなでおろすと切符を買いそのままホームへ向かう。切れる息を整えながら電車を待つ。
僕はその間思い出そうとする。学生時代の事…今でも吐き気がするが…それよりももっと前のこと…何があったのか…思い出そう。
そして思い出そうとしてる中電車が到着。
僕は箱を大事に抱えて電車へ乗り込んだ。
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