第4話 セカイ
アルバイトが終わり家へ帰ればもう少しで20時になるところだった。最近充実しているのか吐き気も少なく、食事も以前よりとれるようになった。
薬は必要なのは変わりないが。
良い傾向だと自分で思い込みながらテレビをつける。テレビにはどこか見覚えのある町が映っていた。僕の住む場所からそう遠くない場所だった。
都会よりも田舎の方…たくさんの木や田んぼのある…知っている世界。
僕はハッとしてノートを開いた。
そこに書いてある大雑把な内容には同じように田舎や田んぼが書きしめされていた。
「まさか…でも…こんな田舎どこにでも…あるよな」
僕はノートを閉じてテレビを消す。
風呂に入りそのまま布団に横になるといつものようにスマートフォンからクラシックを流す。
しかし頭の中からはあの光景が離れなかった。
確かめるべきか…悩んでいるうちに時間になる。
僕は薬を飲みそのまま眠りについた。
彼女はいつものように待っていた。
僕はすかさず彼女の手を取る。
パッと白い世界から色のついた世界に変化する。
木が生い茂り、田んぼが多くある…どこかの田舎道。
「どうかした?」
「い、いや…なんでも…今日はこのままでもいいか?」
確認すれば彼女は微笑みながら歩き出した。
「ここはね、ワタシの大事なところなの」
そう話し出す彼女。
話せるようになって1週間…夢とはいえ妙に現実感のある感覚に僕は戸惑うくらいだ。
「…これは夢なんだろう?」
そう聞けば彼女は微笑むだけだ。この微笑みはなにかを誤魔化しているんだと最近になって気付く。
「ちょうどいい…キミの大事なものはどこにあるの?案内して」
「大事なものはあっちよ」
指の先はとある建物だった。今は誰も住んでいないような古い家。
「キミの家?」
そう聞けば首を横に振る彼女。
「でもあるの…あそこに…大事なもの…」
「そっか…じゃあ僕が届けるね」
そう言えばいつもは見せない嬉しそうな顔で「ありがとう!」と言った。
その瞬間だ。世界が歪み、彼女の顔も見えなくなる。
最後に聞こえたのは「約束よ」の声だけだった。
僕は起き上がると直ぐにノートに書き示す。
スマートフォンで昨日の番組から場所を検索しその場所も書き写す。
ここからはそう遠くなさそうだった。
予定を決めて行ってみよう。
僕はそう思いスマートフォンの中にあるスケジュール管理のアプリにその住所を打ち込んだ。
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