第2話 キミ
今日も1日が終わる。
時刻は23時だ。薬を飲んで眠りについた。
すると現れる…青いワンピースの彼女。
ふと見ると足元は白いサンダルだ。昨日までは見えなかったのに。
「あそこにはね…大事なものが埋まっているのよ」
今日は彼女から話しかけてきた。
「大事なものって…なに?」
そう聞き返すと彼女はまた悲しそうに微笑んだ。
「なんだろう」
よく分からない返答に僕が迷っていると彼女は歩きだす。僕もついていこうとする。けど足は動かない。
「キミの名前は?」
最後に聞こうと思い声をかける…ところで目が覚める。
布団から身体を起こすとため息をつく。
「なんなんだよ…アレは」
頭を抱えるがなにも出てこない。イライラがつのってくる。彼女は誰なんだ…学生時代の同級生にいたか?
僕は押し入れの奥ぞこにしまっていたダンボールを引っ張りだす。そこには学生時代の卒業アルバム。殆どが黒で塗りつぶされていた…僕の黒歴史だ。見たくもないが開いてみる。なにかヒントがあるかもしれない。
結果…なにもヒントは得られなかった。
ただただ記憶が蘇ってきて腹の中から何かが上がってくる。
急いでトイレへ行くとそのまますべてを吐き出す。殆どは胃液で口の中が気持ち悪い。
見るんじゃなかったと後悔しつつ再び卒業アルバムをダンボールへいれて押し入れの奥ぞこに仕舞い込んだ。
そしてまた湧き上がる吐き気を薬で抑え布団に横たわる。息が上がる。思い出したくもない記憶。
僕はよくある根暗という分類でイジられてきた。
そのイジりが今になってもトラウマだ。
笑えないが自分では笑ってしまうほど虚しくなる。何度もこの世を恨んで…恨んだところでなにも変わらないと気付いた。そのときはもう薬に頼るしか生きていけなくなっていた。
面白くない学生時代。
薬生活のせいで中々社会に出られない現状。
周りが羨ましいと何度も思うがその度にスマートフォンでクラシックを流す。
頭を空にする方法としてあみだしたのだ。
少しだけ落ち着いた頃僕は眠りに落ちる。
しかし彼女は出てこなかった。
時間なのか…そう確信したのは今夜また同じ時間に薬を飲み眠った日だった。
「キミは誰?」
「あそこにいるのよ」
「あそこにはなにがあるの?」
「大事なもの」
少しずつ話が繋がるようになった。
ただ肝心なものが分からない。
「キミは何者?」
「…きっとわかる…今じゃない」
「じゃあ…いつ?」
そう聞き返したとき彼女はまた真っ白い世界を歩きだす。僕はその後ろをついて行こうとする。
いつもは足が動かないのに…今日は少しだけ歩けた。でも直ぐ透明なガラスのような物に遮られてその先へはいけなくなった。
そして目を覚ます。
きっと…時を重ねれば行動範囲も広くなっていく。そんな漫画みたいな話があるか…そんな事を思ったが事実起こっているのだ。夢の中で。
夜が怖くなった…と一緒に少し楽しみになっている自分がいる。人とは不思議な生き物だ…そう感じ、また今日も家の中で1日を過ごす。
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