ユメの中のダレカ
@kaoru180802
第1話 ユメ
僕は普通とは少し違う。
僕…山田健は精神的に少し普通ではない。
そのため僕は家から出ることが殆どない。
そんな僕には友人といえる人は1人もいない。
基本家から出ないのだから当然だ。
今日もまた自宅の布団の中で1日を過ごす。
何をするわけでもない。ただスマートフォンでクラシックをかけ自分の感情を落ち着かせていた。
23時がまわった頃僕は薬を飲む。
起きればまたあの憂鬱な毎日が始まる…そう思いなから眠りにつく。
しかし、その日初めて僕の目の前にその人が現れた。夢と現実の境を彷徨っていた僕の目の前に。
黒いロングの少女。ただこちらを見て微笑んでいる。
「君は誰?」
声をかけた。
その自分の声でハッと目が覚める。
自宅の布団の中なのは変わりなかった。夢だと気付きつつも何故か妙に気になるその子。
でも、夢なのだからとため息をついた。
カレンダーを見れば週に1度入っているアルバイトの日。僕はため息をついて布団から出る。
食欲なんていつもないから適当に栄養ゼリーを口に含み飲み込む。勝手に湧き上がる吐き気を我慢して薬を水で流し込む。
外に出る前はいつもこうだ。良くなる日は来るのだろうか…考えても仕方ない。
僕は久々に外出用の服に着替えると家の外に出た。
アルバイトは近くの本屋。
静かでなんとか働けそうな場所だった。
仕事の量は他の店より大量で社員や店長がいない異常空間だがその為かアルバイトやパートの団結力が良く少しだけ居心地がいい。
店が暇になったとき、一緒に作業していたパートの佐藤久美さんになんとなく夢の話をした。
「あら!なにかの予言じゃない?」
なんて笑われた。僕も「まさか。僕にはそんな能力なんてありませんよ」と笑顔で返した。
しかし【予言】という言葉だけが妙に頭を繰り返しめぐる。僕はため息をついてその言葉を振り払うように仕事に手を付けた。
自宅についたのは19時ころ。テレビをつけても興味がもてるものはなくすぐに消し、風呂に入ってそのまま布団に入る。時間までスマートフォンでクラシックを流しながらなにも考えないように頭を空にする。
23時になった頃僕はいつものように薬を飲んで眠りについたのだった。
その日も彼女は夢の中へ出てきた。
昨日ははっきりしなかったが青いワンピースを着ていた。
「昨日の子だよね…?キミは誰なの?」
「あそこにあるの…私の大事なもの」
初めて話してくれた。でも噛み合わない会話。
指差す先は真っ白だ。
「ごめん…僕には見えない…なにがあるの?」
そう聞くとなんとも悲しそうな顔をして微笑んだ。そして真っ白い世界に歩いていく。
ついていこうと思ったが足が動かない。
「ま…待って!」
その声で僕は夢から覚めた。
なんなんだ…と頭を抱え込んだ。見たことのない少女の悲しそうな顔だけが浮かぶ。
とうとう精神的なものが悪化したのか…次の通院日にでも担当医に相談するか…なんて考えてまた目を閉じる。
フッと目を覚ますとあれから3時間ほどたっていた。しかし、あの夢は見なかった。ただの偶然か…僕は布団から出て冷蔵庫へ行き、乾いた喉を潤す。
さて今日はどうやって過ごそうか。
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