第125話 ざまぁを決意する

こんなところで、アイツらが物理的ざまぁではなく精神的ざまぁにシフトチェンジしてくるとは夢にも思ってもいなかった。


「まあ、みんなもあまりアレクをいじめないであげて、こう見えてもフロンガスターを救った英雄なんだから?」



――メアリーさん…… 何で最後が疑問形?



「そう言われてみると確かにそうね。アレク様がにならなかったら、フロンガスターがどうなっていたかわからないわよね」


さすがルナールさん! 分かっていらっしゃる! 白髪の部分は気になるが……


「まあ、その事はまたあとで。今はお互いの交遊を深めよう」


精神的ざまぁを回避すべく、僕は全力で話題を変えようとしたが。しかし……



「アレク様がハゲたら究極魔法が使えなくなるとか面白かったのに、つまらない設定だよね。それならいっそ究極魔法を使ったら白髪じゃなくてハゲる方が笑えるのに勿体無いよね。あっ! かえってハゲじゃなくて薄毛の方がウケるかも! バーコードハゲも捨てがたいわ」


「……………………」



――ミレーユさん。あんた何言ってんの? 僕はまだ18よ。18! それで、おでこがして後頭部の頭皮が見え出したら、僕の将来が失くなるじゃんか! 敢えて、生え際が退するとか言わない辺りが、漢気おとこぎを感じる。


「薄毛は最悪ね。薄毛でハゲを隠すくらいなら、いっそ剃っちゃいなさいよ。と言いたいわね」


「……………………」


メアリーの毒舌全開に言葉を失ってしまった。



「でもこんなバカな話も出来るのも、あともう少しね」


フローラお姉様がしみじみと語る。


「あと3日で、卒業だもんね」


マリアも寂しそうに呟やいた。


「みんなは日本に帰ったら何がしたいの?」


僕はしんみりとした居心地の悪い空気を変えるべく話題を振った。


「当然、プリストかな? こっちにはゲームとか無いしね」


マリアは日本に戻ったらゲーム三昧に日々を送りそうだ。


「ゲームも良いけど、カレーもね」


ルナールが昭和の人なら誰でも知っている往年のカレーギャグをブッ込んで来やがった。ルナールは女子高生だったはずだが、見栄を張って女子高生設定にしているだけなのか? 実は中身はオバチャンじゃないのか? 謎が深まるばかりだった。



「やっぱり私は子供達と遊びたいな」


フローラお姉様は本当に子供が好きなんだろうなぁ。フローラお姉様の狂育きょういくはエゲツないから子供達の将来が心配だが、きっと大丈夫だろう。 ――多分。



「私はお父様の会社を乗っ取りたい! ミレーユを主人公にしてギャルゲーを作らせるわ。勿論、私がプロデューサでAAA大作にするつもりよ。オープンワールド全開で!」


「「「……………………」」」


みんな静まり返ってしまった。



――ギャルゲーにオープンワールドだと!? 男子系セクシィモンスターを狩りまくり、喰いまくりのヤベェ18禁ゲームが爆誕してしまうじゃねぇーか! いつでもどこでもコイツの頭の中が一番ヤベェ。



僕の発言により、これからの希望を語り合うつもりがとんでもない方向に行ってしまった後悔と懺悔の中で、お茶会は終了となった。


物理的ざまぁも心をえぐられるが、精神的ざまぁは闇を更に闇に堕とす結果になるとは、僕は精神的ざまぁをイヤというほど味わってしまった。



この恨みを晴らさずにおくべきか…… 今回の件といい、過去に受けた『ざまぁ』をお前らに返してやる!



その日から僕の新魔法『不眠不休活動魔法おきるのだ』を使い、ヤツらにざまぁすなるべく、新究極魔法に開発に取り掛かる。


期限はヤツらが日本に帰るXデーまで待っていろよ。ヒロイン共!





1日の睡眠時間が1時間有るか無いかの極限状態の中、卒業式を迎えた。


僕としては2年生後半から3年生の前半まで、学園に通っていなかった為に、さほど学園生活の思い出は薄い…… 薄いと思わなければ精神がヤンでしまう。僕の学園生活はファンクラブのヤツらに振り回せられっぱなしだった記憶しかない。なんともおぞましい記憶なんだ…… 不運な事故に出会ってしまったと慰める言葉も見つからないトラウマ級の思い出しか残っていない……

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