第124話 言われなきざまぁ……

クリスが泣き始めると、ヒロイン達もクリスにシンパシーを感じてしまったのだろうか、泣き始めてしまった。


アイツらヒロイン共は人の心を持っていなかったはず、もしかしたら人の心を取り戻したのか? 僕は冷静に、このカオスな現状を眺めていた。


「クリスちゃんは悪くないわ。周りの環境が悪かっただけよ」


フローラは席から立ち上がり、泣きじゃくるクリスを慰める。


「そうよ。クリスは全然悪くないわ」


「うん、うん。クリスのおかけでプリストの世界に転生出来たんだもん。感謝はしても、恨んだりしてないわ」


「マリアの言う通りよ。私、すごく楽しかった」


ルナール、マリア、ミレーユがクリスとフローラを囲んで共に涙を流していた。鬼の目にも涙というものなんだろう。


「アレクが生活費とお小遣いを全部出してくれるから、これからたくさん贅沢な生活が出来るわよ。それにたくさんアレクに甘えられるカモれるわよ。良かったわねクリス。そうでしょ。アレク?」


「えっ!?」


メアリーの言葉にクリス関係のお金は僕からも出すの? クリスの養育費は母上がチャンスキー男爵から山程奪った…… いや、お預かりしたはず。それでも僕からも出すのか?と戸惑っていると、


「えっ!? じゃないわよ。クリスはあなたの妹分になるんだから当然じゃない! ねぇ、クリス」


「うん!」


クリスは今まで号泣をしていたとは思えないほど元気な声で返事をした。クリスはオヤジに金銭を強請ねだるパパ活女子なのか?


「あ、ああ…… そうだね。僕の方で面倒を見るから…… 大丈夫だよ。 ――トホホ」



「それなら安心ね。良かったわねクリスちゃん」


「うん!」


フローラお姉様は笑みを浮かべながらクリスと話していた。


「クリスは良いわね~ もう王族がハックに付いているんだもん。やりたい放題じゃないの!」


「うん! 天下無双!」


マリアはクリスを羨ましそうに話していた。


「クリスちゃんは卒業と同時に王宮に引っ越しするんでしょ? それで王宮暮らしかぁ、良いわね~」


「うん! アリシアさんが専属メイドになってくれるって!」


「アリシアさんは何でも器用にこなせるから頼りになるわよ」


「うん! アリシアさん有能!」


ルナールはアリシアの事を過大評価をしているようだ。僕から見たらポンコツボッチにか見えないのたが……


「クリスちゃんもアレク様を闇に堕として王家を簒奪するのよ。そして、女王になって幸せになってね」


「うん! アレクから王太子の地位を奪ってみせるからね!」



――!? ミレーユ! 今、王家を簒奪するとか言わなかったか? クリスに恩を仇で返すような狂育きょういくをするんじゃねーよ! マジでやめろよ、クリス!




「アレク様と結婚して、クリスが王妃になってぇ~ アレク様をサクッと暗殺したら女王になれるんじゃない?」


「うん! 時期を見てサクッと暗殺してみるよ」



――!? おいミレーユ! クリスに簒奪の方法を教えてるんじゃねぇよ! クリスのヤツ、マジで実行しようとしてるじゃねぇーかよ! ミレーユはホントに狂気に満ちてるよな。ま、まさか、ミレーユのヤツは僕に『ざまぁ』をする気なのか? ド天然デストロイヤーと見せかけて、王家簒奪のざまぁをする気だな! そんな事は僕の目が淀んでいるうちは絶対に許さねぇ!



「クリスちゃん、ミレーユから良いこと聞いたわね? 良かったわね」


「うん!」


「……………………」



――フローラお姉様! あんたもヤベェヤツの一員だった事を忘れていたぜ! これでも保育士さんだと!?…… 日本の子供達の未来が心配になっちまうぜ!



「アレク様って魔法が得意だから、普通の暗殺だと無理じゃない?」


「うん! そうだった」


「ヘタレなアレク様だったら、チューでもしたら悶絶死するんじゃない?」


「うん! チューして悶絶死させてみるよ」



――!? マリアまでぶっ飛んだ事を言い出しやがって! 僕はチューをされて、悶え死にするほど超天然記念物純情ピュアピュアちゃんじゃねぇーよ! チューの前に、こっちはクリスに頭を噛られてるんだぞ! 



「そうね。ヘタレ過ぎるアレク様にはぴったりね。ここまでヘタレだと将来の王家も心配になるわ。このまま族滅も良いかも…… 激ムズのプリストには恨みしかないしね」


「うん! ルナールの恨みは私が晴らす!」


「クリス。お願いね」


「……………………」


僕のメンタルはヒロイン共のお陰でボロ雑巾のようになってしまった。



――ヤベェヤツの中で、一番まともだと思っていたルナールが一番ヤベェヤツだった。コイツら日本に帰るからって、好き放題言いやがって! 世話になった僕にコイツら、最後に精神的ざまぁをしてくるなんて……

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