第13話
汚い汚い私の声。
夏は私の声を聞いてどう思うのだろうか。
嫌いになったかな。
それとも...。
そんな馬鹿な期待を胸に抱きつつ、
夏を見ると、振り返って私の目を見つめて
〔綺麗な声だね〕
と遠くで手話している夏が居た。
途端、私の頬に涙が伝う感覚がした。
そんな私を見て驚いたのか、
夏は慌てて私の所へ駆け寄ってきた。
「どうしたの?」
喋り慣れてないようなカタコトの日本語で
そう私に問いかけた。
そんな優しい夏の声に安心したのか、
私は気づいたら本音を漏らしていた。
〔夏の耳が聞こえるようになったら、手話なんてする意味が無くなるでしょ?〕
〔それが嫌だった〕
そう伝えると
〔僕と声で話すのが嫌だったってこと?〕
〔違う〕
〔夏に私の声を聞かれるのが嫌だった〕
ぼろぼろと大粒の涙が頬を伝うのが
自分でも分かる。
「嫌いなの...自分の声が大嫌いだから...」
「僕は未鳥の声、好きだよ?」
そう夏は声に出しながら
人差し指と親指をつまむようにした動きと
同時に喉元から下に下げた。
手話で『好き』を表す動き。
あぁ、なんでこんなにも夏は優しいのだろうか。
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