第8話
〔未鳥は僕と一緒で耳が聞こえないの?〕
〔ううん、そんなことは無いよ〕
〔そうなんだ、きっと素敵な声なんだろうね〕
素敵な声...。
私の声は素敵な声なんかじゃない。
もし、
夏の耳が聞こえるようになったらどうしよう。
面と向かって話せなくなるのかな。
そんなの嫌だ。
〔未鳥?〕
〔なに?〕
〔なんか辛そうな顔してたよ?大丈夫?〕
〔うん、大丈夫だよ〕
〔それなら良かった〕
そう言って笑う夏。
なんだか夏の笑顔を見ると、
魔法みたいに嫌な感じが
すーっと消える感じがする。
〔そういえば未鳥はなんで僕に話しかけてきたの?〕
正直に言った方がいいのだろうか。
でも、『音が好きだ』なんて言って
夏を傷つけちゃったら...。
〔未鳥?〕
〔話したくないなら無理しなくてもいいよ?〕
〔あ、そんなこと無いよ〕
〔ただ音が好きって言ったら、夏のこと傷つけちゃわないかなって...〕
〔未鳥は音が好きなの?〕
〔うん〕
〔僕はね、音が楽しめない代わりに香りを楽しむのが好きなんだ〕
〔香り?〕
〔例えば草が揺れる動きは、草の香りに代用出来るでしょ?〕
なんだか、難しい。
だけど、香りの話してる時の夏、
私が音の話してる時と似てる。
なんだか、可愛いな。
そんなことを思いながら夏の顔を見ていると
〔あんまり見られると恥ずかしいんだけど...〕
と言われてしまった。
ずっと恋の音が鳴り止まない。
でも、きっと、この恋は叶わないから、
こんな気持ちは捨てないと────
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