第7話

〔帰ってくるの早くない?〕


〔その子、友達?〕


家に入って早々、


お母さんは男の子の存在に気づく。


〔昨日会ったんだ〕


私がそう答えると


〔風邪引く前にタオル持ってくるから待ってて〕


と私と男の子に言った。


すると男の子が驚いた顔で


〔君と君のお母さんも手話で会話するの?〕


と聞いてきた。


自分の声が苦手だということを


伝えようと思ったが、なんだか気が引けて


〔勉強のためにそうしてるんだ〕


と嘘をついてしまった。


〔なんか、いいねそれ〕


そう真面目そうな顔で男の子は言う。


『そういえば』と思い、


私は名前を聞こうと思った。


が、お母さんがタオルを持ってきて私たちに


渡したのが1歩早かったようだ。


私達はタオルで髪を拭きつつ、


和室へ向かった。






座ると男の子は何か聞きたそうにしていた。


〔なに?〕


私は人差し指を立てて


左右に2、3回揺らしながら首を傾げた。


すると男の子は


〔君の名前はなんていうの?〕


と聞いてきた。


どうやら同じことを聞こうと思っていたらしい。


〔私の名前は糸風 未鳥。君は?〕


〔天叶 夏〕


夏...。


〔未鳥って呼んでもいい?〕


〔いいよ。じゃあ私は夏って呼ぶね〕


〔うん!〕


なんだか夏の笑顔は、


夏の爽やかな感じと少し似ている気がする。

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