使えねえと言われる土魔法は知識があればどんな魔法よりも強力です。

イカレ狂人しか書けない人

第1話 ものと知識は合わさる事で意味を成す。

「おはよう。今日も勉強?」

「おはようアリーヤ。知識はいつか力になるって言うだろ?」

「聞いたことないよそんな言葉…」

「まぁ自分で今作ったんですけどね!!」

「フンっ!!」

「痛ぇ…」


幼馴染に頭を叩かれた。このアリーヤは俺が物心付く前から一緒にいる幼馴染でフィジカルが強く、それなりに知恵がある。そんじょそこらの冒険者よりも既に強く、父親と母親譲りのいいとこ取りで産まれた。おかげで本気で暴れると手が付けられない。かという俺も父親と母親の血を受け継いで、知恵だけはこの街で一番を誇るが、フィジカルがダメダメになってしまいました。親両方とも戦闘経験が無いしな。


「それにしても…明日がギフトの日だね…」

「そうか、明日だったな。」


明日、スキルギフトの日が来る。そこでスキルを神から授かる。人生がそれで決まると言っても良い。メインスキルとサブスキル。この二種類が授けられる。


「…良いスキルを引くといいなぁ…」

「まさに神引き…だね。」

「こりゃ一本取られた。」


不覚。なるようになるさ。これは神のみぞ知るってとこだな。


――――――

教会。この日は俺とアリーヤだけがいた。


「スキルギフト、お前が先だってさ。」


「私が先かぁ…」


そうして席を立って、女神像の前で祈りを捧げる。

横で神父様が神奉行をする。


「「…!?」」


結果、なんとメインスキルを2つ授かり、4つサブスキルを授かった。

メインスキルは大賢者、属性は全属性。2つ目が剣聖、どんな武器でも扱える。全てが一個でも持っていれば上等な身分を手に入れる事ができる。それにサブスキルも抜かりがない。

ブラックボックスにオールリペア、マジックリアクター、ノーヒット…この3つは上位互換も無いどころかこれがその最上位だ。しかも最後に関しては見たことが無い。情報が無い。未知数だ。


これは世界のバランスが大きく崩れる。本当に国に管理される様な人生を無理矢理にでも送らされる羽目になる。それは幼馴染としても防ぎたい所だ。それに、そんな人生を送ってほしいとは思わない。あの脂ギッシュな中肉中背の国の甘い汁を国民から絞り上げる上層部に良いように使われてたまるか。


「次は俺だな…」


そうして、俺も女神像に向けて祈りを始める。


(どうか、どうかたった一人の幼馴染を守れるだけの力と知恵をください、それ以外は自分で取ってみせるから、どうか……)


そうして、俺は神からスキルを授かった。授かってしまった。


「…そうか。俺にはそんな権利が無いってか。」


メインスキル、魔法使い。土属性。この国ですらありふれた魔法使い。よりにもよって使い道の無い土属性。最悪も良いところだ。サブスキルは一つ………


「何だ……これ…」


、としか書かれていない。少し賢くなっただけか?それとも何だ、これで現実を見ろとでも言うのか。


「…。」


結局何一つできない。土属性の魔法使いゴミ知恵現実を貰っただけだった。


―――――


その日から俺は荒んだ。荒みに荒んだ。本の山と自身の知恵を表彰するトロフィーや賞状は今や見る影もないほどに壊した。こんなことをしても何にもならないと知ってはいるが、もうこんなことしかできない。過去をこだわるつもりも無いが、未来が存在しないという事実は何も知らない過去の方が良かった。こんな未来なら知りたくもなかった。


食事も喉を通らなくなった。いや、そもそも食べてもいなかっ

たからわからない。食べれば喉を通るのかもしれないが、そんな気にならない。水は取っていたが、それ以外取っていない。たったの数日で体が軽くなった。


今の俺に何が出来るか、教えてくれよ。出来ることの無い俺に。スキルは使い物にならない。まともな生活は望めない。

輝かしい未来は最初から用意されていない。それどころかまともな生活もできない。遮音シールドを貼った部屋は自分の声だけが聞こえる。部屋の鍵もあれ以来開けていない。繋がりは自分で断ち切ったんだ。俺よりももっと適任がいる。

俺の声は誰にも届かず、誰の声も俺には届かない。


そうだ、誰も教えてくれないなら自分で調べるだけだ。過去の俺がそうしていた様に。

気付いた事がある。俺はスキルを使っていなかった。

魔法も、サブスキルの知恵も。いや、知恵は使とは思っていなかったんだ。そもそも使用可能だと思っていなかったから発動すらしていない。


だから俺は、を発動した。


自分の中に意識が引き込まれ、虚無を越え、いつしか開けた空間に出た。


「何だ…これは…」


眼の前にあるのは確実に知恵だった。人類が手探りで求めだした知恵は、確かに全てが記してあった。


「そうだ、これだけの情報があるのなら、この使い道のない土属性でも使い方があるかもしれない。」


莫大な情報の中に答えはあった。


「土属性の魔法はありとあらゆる物質、元素を生成可能…元素って何だ?」


また調べ上げ、出てきた疑問をまた調べ上げる。


「全てを理解した。使い道は無限にあったんだ。ただ我々が知るのを後回しにしていただけなんだ。」


―――――

止まった針は動き出す。


「土属性はゴミじゃない!!無限の可能性を秘めた究極の属性なんだ!!」


全ての源は大地から始まる。故に大地は全てになりえる。


「こうしてはいられない!!時間は有限だ!!」


そうして扉のロックを解除し、遮音シールドを叩き壊した。


「アイン!!」

「母さん服とご飯用意しといて!!風呂入ってくる!!父さんは紙とペン、あと糖分補給できるもの買って来て!!」


両親の声を無視し、風呂へ直行する。何も言わずに二人は行動し始めた。

なぜ俺は風呂に入っているのかって?そりゃ、流石に気持ち悪くなって来たからだ。


が、時間は有効活用しないといけない。

国に利用されない為にはどうすればいいのかを考える。結論はすぐに出た。

アリーヤを縛れないように国を脅せばいい。

勝手にアリーヤの人生を滅茶苦茶にしない様に抑止力を持てばいい。国に対しての抑止力。


国に対しての抑止力は知恵で探して見つけた。


「武器を作るんだ。それこそ王都を一撃で吹き飛ばせるような力を持った武器を。」


風呂から上がって用意されたタオルで身体を拭いて服に袖を通す。


「アイン……」

「心配かけてごめんよ母さん、俺はもう元に戻ったよ。」

「あそうだ。父さんが帰ってきたらこれを渡して今度は質屋に走らせてくれる?」

「アイン?アイン!?」


そうして土属性の魔法の一つであるアースファクトリーでAu《金》を作った。この魔法はシンプルな岩しか作れないと言われていたが、デフォルトが岩なだっただけだった。


「こんな金塊どこから持ってきたの?」

「アースファクトリーで作った。簡単だったよ。」

「アースファクトリーって…あの?」


実際これの使い道がわからなかっただけで分かればいかなる魔法もゴミに見える。少なくともこの魔法があれば金には困らないだろう。


「ついでに銀も白金もできるよ。」

「金を魔法で作ったの?」

「仕組みがわかれば簡単だったよ。」

「やっぱりアインは天才ね。」


さて、これで金銭面も解消された所だし、あと足りないのは人手くらいだ。ならば金で解決するまでよ。悲しいが金で解決できない問題は殆ど存在しないし影響しないものは存在しない。


既に商人としては生きて行けるどころか裕福な暮らしもできるようになったがアリーヤがそうじゃないからそんな気も起きない。


作られた料理は美味しい。自分の舌の好みもあるだろうがシンプルに料理が上手なのもあるだろう。この料理で父さんを落としたのだろうか。


さて、とりあえず国に対しての抑止力を考えなくては…金銭では多分受け取るだけ受け取って実際には縛るって事が予想される。あの国の上層部は控えめに言ってクズばかりだ。まともなのは片手で数えれる程しかいない。どうなってんだこの国は。考えてもしょうがない。今は国を脅す事を考えよう。

一撃の威力の高めるにはどうすればいいのか。スキルで吹き飛ばす?いや、このスキルは戦闘向きじゃない。どっちかって言えば後方支援型だ。アリーヤ本人が強くなればいい?多分その前に国に回収される。

ではどうするのか、というのは今調べている。爆弾と言うのは良さそうだ。無差別に巻き込む、というのは気が引けると思ったが、王都は殆どがブサイクデブ上流貴族様達が殆どだ。僅かな奴らは自分で逃がせばいい。

人手問題は冒険者ギルドにでもクエストを出せばいい。


爆薬がいくら必要になるか…というのは計算で…求める必要もないな。無理だ、いくらなんでも必要量が多すぎる。当たり判定がデカすぎる。王都に落ちる前に空中で爆散する。

都合良い高威力で小型な爆弾が欲しい…


と、コンコンと玄関の扉をノックする音が聞こえた。

いや…このパターンは…


「あの…アイン…いま…」

「よう。今は元気ピンピンだ。見ればわかるさ。」


……あれ?

アリーヤ「よ"か"っ"た"よ"ぉ"ぉ"ぉ"」

「おい泣きながら抱きついてくるな鼻水類があーっ!!もう手遅れじゃねえか!!」

「まったく…世話のかかる息子でごめんね?」

「世話のかかる息子は否定しないが止めろよ!!」


あっちょ、なんか当たってる当たってる!!柔らかい物が…ん?


「ちょっと!!離れるんだNA!!」


服を一枚犠牲に緊急離脱。


「お前今どんな状況に置かれてるかわかってんのか?!」

「んえ?どんなって…」


「今お前は国にとって首輪をつけて管理したい相手なんだよ!!」


「「「!?」」」


いつの間にか親父も参戦。


「それってどういうこと?」

「いいかよく聞け、そして絶対に忘れるんじゃないぞ。」

「お前は現状自由の身だが、もしお前がイレギュラーって事がバレれば間違いなく国にとって管理すべき対象になる。つまり、まともな人生は送れなくなる。」

「……わかってるよ。」

「お前にしては物わかりが良いじゃないか。俺がそれを何とかするまでなんとしても隠し通せ。必ず解決する。」


それに、たった今結論が出た。小型で街一つなら軽く吹き飛ばす都合のいい爆弾が。


「原子爆弾を俺が作るまででいい。そうすれば国は嫌でもお前は自由になる。自由にせざるを得なくなる。」

「原子…爆弾?」

「原理はこうだ。まずUウラン235という物質がある。性質としてはかなり危険だ。近くにいるだけで病気になる。これはまだ序の口。本当に危険なのはこの物質が一定量集まった時に起こる。この物質が一定量ある状態で中性子が高速でぶつかると、核分裂反応が起こる。この際にエネルギーが放出されるのだが、その際にこの同じ物質が2つに分裂する。そしてその際に中性子2つに増える、結果、連鎖反応を引き起こし、大量のエネルギーを放出する。大まかな解説だがな。」

「…そんな物質存在するの?」

「火薬があるくらいだ。存在はする。」

「それに威力の計算式も出ている。」

「……桁が狂ってる…」

「でもこれが事実だ。」


だがこんな高威力な爆弾どうやって自爆しないように使うかが問題になる。


魔法で運ぶ、というのも手だが、一体どれほどの魔力を要求されるのかわからない。運ぶ手段も考えなければ…


アリーヤを家に送り届けた後家の一室で紙とペンを走らせる。


これを核兵器と呼称するがとりあえず調べてみることにする。知恵によれば主に2つ、空中投下かICBMだそうだ。

飛行機?ひこうきと読むのか。それにICBMってなんだ?


「ICBMは時間がかかりすぎるな。」


それにえいせい?が必要不可欠らしい。やはり飛行機しかないのか…あれ他にもあるじゃないか。


「……核砲弾?砲弾に出来るサイズか?」


…よく調べたらプルトニウム239とかいう新しいもんが出てきやがった。このサイズで核兵器になるのか確かに砲弾に出来そうだ。で、威力は?

計算結果。わぁ、余裕で王都ごと吹き飛ばせますね。


「これにしよう。」


飛距離は十分だ。離れたところから爆発させられる。


でも作るには人手が足りない!!


人手がないなら呼んでくるまでよ。それに冒険者ギルドに出すよりも安く済む方法を考え…待て、考え方が上流貴族に似てきた。金はやはり人に対して有害だな。だが、これはこれで雇用を増やすのに繋がるか。

よし決めた、スラムの人を拾ってこよう。


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