第8話「逆転の発想」

# デスゲームからの脱出

## 第8話「逆転の発想」


「スタック領域を介して、逆アクセスを...」


キーボードを打つ指が止まらない。モニターには次々と新しいコードが流れていく。


```

// リバースシェル的なアプローチで、バッファオーバーフローを利用

void reverse_overflow() {

char exploit[128];

size_t overflow_size = 0xFFFFFFFF;


// 保護領域のアドレスを特定

void* protected_area = (void*)0xC0000000;


// エクスプロイトペイロードの構築

memset(exploit, 0x90, sizeof(exploit)); // NOPスレッドで領域を初期化


// シェルコードの位置を計算

uint32_t ret_addr = (uint32_t)protected_area + OFFSET;


// ペイロードの末尾にリターンアドレスを配置

*(uint32_t*)(exploit + 124) = ret_addr;

}

```


「これは...」村上が息を呑む。


「ああ。彼らが仕掛けたバッファオーバーフローの脆弱性を利用して、逆に保護領域にアクセスする」


「でも、それだけでは...」


「まだです」俺は更にコードを打ち込む。


```

// 神経パターンの同期を利用した分散処理

struct NeuralNode {

void* memory_addr;

uint32_t pattern_size;

uint8_t sync_status;

};


void distributed_overflow() {

NeuralNode* nodes = get_connected_nodes();

uint32_t node_count = get_node_count();


// 各ノードに処理を分散

for(uint32_t i = 0; i < node_count; i++) {

if(nodes[i].sync_status == ACTIVE) {

// 小さなペイロードに分割して送信

split_payload(nodes[i], exploit_code);

// タイミングを微調整

usleep(TIMING_DELAY);

}

}

}

```


「これは...分散型の攻撃?」榊原が問いかける。


「ええ。一つのノードへの負荷を分散させることで、神経への負担を最小限に」


モニターには新たな警告が表示される。


```

WARNING: Unauthorized access detected

Initiating countermeasures...

FAIL: Buffer overflow in protection routine

```


「来た!」


保護領域への侵入に成功。次々とデータが流れ出す。


```

PROJECT: MIND_RECONSTRUCTION

STATUS: Phase 3

TARGET: Digital Consciousness Transfer

ERROR_COUNT: 47

FATAL_ERROR_COUNT: 12

```


「これは...」榊原の声が震える。


画面には、想像を絶する実験の記録が表示されている。人間の意識をデジタル空間に完全に転送しようとする試み。そして、その過程での数々の失敗。


「でも、なぜこんな...」


その時、新たなウィンドウが開く。


```

CONSCIOUSNESS_TRANSFER_LOG

SUCCESS_RATE: 0.01%

NOTE: Subject #471 showed promising results

STATUS: Partial consciousness maintained in digital space

```


「まさか...」


「ああ」榊原の表情が固まる。「彼らは既に成功している。部分的にではあるが、人間の意識をデジタル空間に...」


「じゃあ、今のゲーム内で起きている死亡は...」


「新たな素材の収集です」榊原が言い切る。「より完全な意識転送のために」


その時、システムに新たな変化が。


```

UNKNOWN_SIGNAL_DETECTED

SOURCE: Protected Area 0xFF000000

TYPE: Neural Pattern

STATUS: Active

```


「これは...」


保護領域の最深部から、何かが、こちらを監視していた。

そして、それは明らかに、人工的なものではない。


---続く---

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