第6話「脳波同期プロトコル」
# デスゲームからの脱出
## 第6話「脳波同期プロトコル」
「BCI(Brain Computer Interface)の制御プロトコルが...」
マインドダイブ計画の責任者、榊原が取り出した記録媒体のデータを、俺たちは息を呑んで見つめていた。
「これは、通常のVRヘッドセットの制御とは全く異なる」
画面には複雑な制御プロトコルの仕様が表示されている。脳波のパターンマッチングによる同期制御。ニューラルパターンの直接的なデジタル変換処理。そして、最も驚くべきことに、記憶領域への直接アクセスを可能にするための低レベルインターフェース。
「従来のBCIは、脳波を単純な信号として解釈するだけでした」榊原が説明を続ける。「しかし、このプロトコルは違う。脳の特定の領域と、一対一で同期するんです」
「まるでデバッガがメモリにブレークポイントを設定するように...」
「その通りです」榊原は頷く。「私たちは、人間の記憶領域を、まるでコンピュータのメモリのように直接操作できる手法を開発した」
「しかし、それには致命的な問題が」佐藤が口を挟む。
「ええ。同期の過程で、脳の記憶領域に不可逆な破損が発生する。簡単に言えば、データを"読み出す"過程で、元のデータが破壊されてしまうんです」
俺は画面のコードを凝視する。
```
SYNC_PROTOCOL_V2 {
NEURAL_PATTERN_MATCHING: {
frequency_band: THETA_WAVE,
sync_threshold: 0.95,
error_correction: HAMMING_CODE,
buffer_size: 0x1000
},
MEMORY_ACCESS: {
region: HIPPOCAMPUS,
access_mode: READ_DESTRUCTIVE,
error_handling: FORCE_PROCEED
}
}
```
「このコードの意味は...」
「その通りです」榊原の表情が暗い。「記憶の読み出しは、必然的に対象の破壊を伴う。それが、ゲーム内での"死"という形で表れている」
「でも、なぜそこまでして...」
「記憶の完全なデジタル化です」榊原は淡々と語る。「人間の意識そのものをデジタル空間に移植する。それが、このプロジェクトの最終目標でした」
「しかし、それは...」
「正気の沙汰ではない?そうですとも」榊原は苦笑する。「だからこそ、プロジェクトは表向き中止された。しかし...」
その時、病室の照明が突然消える。非常灯も点灯しない。完全な停電だ。
「これは...」
暗闇の中、榊原の声が響く。
「来ましたか。私の...後継者たちが」
PCのディスプレイだけが青白く光る中、新たなウィンドウが開く。
```
INITIATING FORCED SYNC...
TARGET: ALL_CONNECTED_DEVICES
PROTOCOL: NEURAL_HARVEST_V3
STATUS: EXECUTING...
```
「これは、強制同期プロトコル!」榊原が叫ぶ。「病院内の全てのネットワーク機器を介して...」
「くそっ」咄嗟にネットワークケーブルを引き抜く。
「待って」村上の声が暗闇から響く。「このコード、見覚えが...開発時の没データの中に、類似したプロトコルが!」
「詳しく!」
「ゲームエンジンの深層に、似たような同期プロトコルが組み込まれていた。でも、当時は使用されていなかった。まるで...」
「まるで、この時のために埋め込まれていたかのように?」
暗闇の中、キーボードを叩く音が響く。
モニターには、次々と新たなコードが流れていく。
そして...
---続く---
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