第5話「実験データ」

# デスゲームからの脱出

## 第5話「実験データ」


目を覚ますと、そこは病院の一室だった。


「...ッ」体を起こそうとして、鈍い痛みが走る。


「目が覚めましたか」


振り向くと、そこには見覚えのある顔。救助本部の本物の捜査官、佐藤だ。


「村上さんは!?」


「無事です。軽い打撲で済みました」佐藤は椅子に座り直す。「運転手の方は...残念ながら」


「...」言葉が出ない。


「ただ、彼が残してくれた物があります」


佐藤がタブレットを取り出す。画面には、古びたプロジェクトファイルが表示されている。


「バンから見つかったデータです。2019年に実施された、秘密裏の人体実験計画。コードネーム"マインドダイブ"」


スワイプするたびに、恐ろしい記録が次々と明らかになっていく。


被験者の脳波データ。

記憶抽出の試験結果。

そして...死亡事例の報告書。


「これは...」


「ええ。現在のVRゲームの原型となる技術です。しかし、その裏で、違法な人体実験が行われていた」


記録によれば、実験の目的は「人間の記憶と意識の直接的なデジタル化」。そのために、数十人の被験者が使われた。


「しかし、なぜ今になって...」


「それが」佐藤は声を潜める。「実験で得られたデータの行方が、気になるんです」


画面をスクロールすると、実験データの保管に関する記録が出てくる。


「保管場所は、現在のゲームサーバーと同じデータセンター...」俺は息を呑む。「まさか」


「その可能性が高い」佐藤は頷く。「彼らは、実験データを回収するために、このゲームを使っている」


「でも、どうやって?」


「これを見てください」


佐藤が別のファイルを開く。そこには、現在のゲーム内で起きている「死亡」のデータが並んでいた。


「これ、脳波パターンが...」


「ええ。実験時のものと、酷似しています」


全身に悪寒が走る。


「つまり、プレイヤーが"死亡"する時、彼らの脳から何かを抽出している...?」


その時、病室のドアがノックもなく開いた。


「村上さん?」


しかし、そこに立っていたのは見知らぬ男。白衣を着ているが、明らかに医師ではない。


「やはり、ここまでお分かりになっていたか」


男は、ゆっくりとドアを閉める。


「あなたは...」


「私は、マインドダイブ計画の責任者...でした」


佐藤が立ち上がる。が、男は手を上げて制止した。


「暴力は無用です。私は、話し合いに来ました」


「話し合い?」


「ええ。あなた方に、真実を知ってもらうために」


男はポケットから古い記録媒体を取り出した。


「これが、全ての始まり。そして...終わりになるかもしれない」


俺たちは、息を呑んで見つめ合った。

この先にある真実は、想像以上に深い闇を抱えているのかもしれない。


---続く---

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