第4話「暗部」

# デスゲームからの脱出

## 第4話「暗部」


地下駐車場へと続く非常階段を駆け下りながら、頭の中で状況を整理する。


開発初期の没プロジェクト。

救助本部に潜入した敵。

そして、謎のメッセージの送信者。


「村上さん!」階段を下りながら声をかける。「あのプロジェクト、他に覚えていることは?」


「え、えっと...」息を切らしながらも村上は必死に思い出そうとしていた。「確か、脳への直接的なアクセスを可能にする実験的な機能で...」


背後で扉が開く音。追っ手が近い。


「このフロアです!」


地下駐車場の扉を開け放つ。暗闇の中、車両のシルエットが並ぶ。


「灰色のバン...灰色のバン...」


目を凝らして探す。その時、遠くでエンジン音が低く唸った。ヘッドライトが点滅する。


「あそこ!」


走る。銃声が響く。


「伏せろ!」


村上を庇いながら、車両の陰に隠れる。銃弾が金属を打つ音。


「なんで...なんでこんな...」村上が震える声で呟く。


その時、例の着信が。


『後部ドアが開いています。確実に』


見れば、確かにバンの後部ドアが少しだけ開いている。


「信じるしかない...村上さん、行くぞ!」


「は、はい!」


「せーの...今だ!」


一気に駆け出す。銃声が再び響く。が、明らかに精度が落ちている。暗闇と距離が、こちらに味方していた。


バンに飛び込む。扉が自動で閉まり、車は急発進した。


「大丈夫ですか!?」運転席から声がする。


「ああ...」後部シートで息を整えながら答える。「あんたが、メッセージの...」


「話は後です。今は撒くことに集中させて」


バンはスピードを上げ、地下駐車場を出る。バックミラーに、追っ手の車のライトが見える。


「あの、これは...」村上が声を絞り出す。


「元開発チームのメンバーだ」運転手は言い切った。「私も、そうです」


「なんだって...?」


「没プロジェクトの真相...あれは単なる安全性の問題じゃない。人体実験だった」


「人体実験?」


「被験者の脳に直接アクセスし、特定の情報を抽出する。それが、プロジェクトの本当の目的でした」


急ブレーキ。車体が大きく傾く。追っ手の車が、わずかに距離を落とす。


「今回の事件も、同じです。あいつらは、プレイヤーたちを使って何かを...」


その時、フロントガラスが砕ける。


運転手が倒れ込む。ハンドルが大きく切れる。


「危ない!」


咄嗟にハンドルを掴む。しかし、間に合わない。


車は、ガードレールに激突した。


意識が遠のく前、携帯に最後のメッセージが届く。


『すまない。でも、これで真相に近付いた。ファイルは...バンの...』


暗闇が迫る。

サイレンの音が、どこか遠くで鳴り始めていた。


---続く---

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