第3話「暗号の痕跡」
# デスゲームからの脱出
## 第3話「暗号の痕跡」
救助本部の解析室。夜が更けていく中、俺は画面に映し出されたコードを凝視していた。
「やはり、ここが怪しいですね」
隣でコードを確認していた若手エンジニアの村上が指摘する。彼女は元々このゲームの開発チームの一人だった。今は捜査に全面協力している。
「ああ。通常のシステム処理とは明らかに異なるパターンだ」
画面には、ゲームの基幹システムのログが流れている。その中に、一定間隔で挿入される不自然なデータの流れ。
「これ、暗号化された通信を示唆していませんか?」村上が眉をひそめる。
「間違いない。犯人は、ゲームサーバーを介して外部と通信している」
その時、携帯が震えた。またあの番号からだ。
『貴方は正しい道筋を辿っています』
「...」
続けて次のメッセージが届く。
『しかし、時間が足りない。もう一人、死にました』
背筋が凍る。瞬時に救助本部のメインルームに駆け込む。
「状況の確認を!」
大型スクリーンには、新たな犠牲者のデータが表示されている。ゲーム内でのPK...プレイヤーキル。精神的に追い詰められた若いプレイヤーが、別のプレイヤーを攻撃し、そして自らも...
「くそっ!」
携帯を見つめ直す。この送信者は誰なのか。味方なのか、敵なのか。
「あの、中村さん」村上が声をかけてきた。「気になることがあるんです」
「なんだ?」
「このコードの一部、見覚えがあるんです。開発初期に、没になったシステムの痕跡があります」
「没になったシステム?」
「ええ。フルダイブ機能の制御に関する部分です。当時は安全性の問題で採用されなかったのですが...」
キーボードを叩く音が、静かな解析室に響く。
「これは...!」
画面に表示された古いプロジェクトのログ。そこには、現在のシステムと酷似したコードの断片があった。
「まさか...」
携帯が再び震える。
『近いです。でも、方向が違う』
「おい、村上さん」俺は声を潜めた。「このプロジェクト、誰が提案したんだ?」
「えっと...確か...」
その時、解析室のドアが開く。
「お疲れ様です」見知らぬスーツ姿の男が入ってきた。「捜査本部から来ました」
バッジを提示される。しかし、何かが違う。
村上が小さく息を呑む。「あの、そのバッジ...」
俺は咄嗟に画面を切り替えた。が、遅かった。
男の目が、わずかに細まる。
「なるほど。そこまで辿り着きましたか」
その声には、もはや取り繕う気配すらない。
携帯が震えた。
『危険です。直ちに避難を』
次の瞬間、停電が起きた。
非常灯が点灯する中、俺は村上の手を掴んでいた。
「走れ!」
背後で、何かが光る。刃物か?
銃か?
真っ暗な廊下を駆ける足音と、追っ手の気配。そして、携帯に届く最後のメッセージ。
『地下駐車場。灰色のバン』
この暗号めいた通信の主は、誰なのか。
開発初期の没プロジェクトと、今回の事件は、どう繋がっているのか。
そして、救助本部に潜り込んでいた敵の正体は...
答えを見つける前に、まず、ここを生き延びないといけない。
---続く---
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