第2話「救助本部」
# デスゲームからの脱出
## 第2話「救助本部」
「確認できたのは、システムメニューの異常な挙動だけです」
警察庁サイバー犯罪対策課に設置された救助本部で、俺は自分の経験を説明していた。目の前には、捜査員、ゲーム会社のエンジニア、そして医療関係者が集まっている。
「具体的には、特定の条件下でメニュー展開時に0.2秒程度の遅延が発生。これが、システムの脆弱性を示唆していました」
「その遅延は、通常のネットワークラグとは異なる?」エンジニアの一人が食い入るように質問してくる。
「ええ。明らかにローカルな処理での遅延でした。おそらく、強制ログインのための改造コードが、本来のシステムと競合している証拠です」
会議室の大型スクリーンには、全国の被害状況が映し出されている。総プレイヤー数、確認された死亡例、そして刻々と更新される各種データ。あの世界に取り残された人々の数が、冷たい統計として並んでいた。
「システムの改造は、発売前から計画されていたものなのか...」捜査員の一人がつぶやく。
「いいえ」俺は即座に否定した。「あくまで私見ですが、これは後付けの改造です。だからこそ、システムに負荷がかかっている。本来のコードに無理やり上書きした痕跡が、あちこちに見られます」
「それは、開発段階から計画されていた犯罪ではないという証拠になりますね」捜査官が熱心にメモを取る。
会議が続く中、俺の携帯が震えた。見覚えのない番号からのメッセージ。
『貴方の投稿、拝見しました』
バグ報告フォーラムに投稿した内容について言及している。送信者の名前はない。
『私たちにも、同じ考えを持つ仲間が必要です』
「...」
躊躇なく、メッセージを保存。スクリーンショットを撮り、すぐに捜査員に報告する。
「差出人の特定を急ぎます」サイバー班の隊員が素早く動き出す。
その時、会議室の扉が勢いよく開いた。
「緊急事態です!」若手捜査官が息を切らして報告する。「ゲーム内で、最初の"死亡"が確認されました」
室内の空気が凍る。
「プレイヤーの生体反応は?」
「...途絶えています」
沈黙が会議室を支配する。
俺は立ち上がった。「システムの解析を急ぐ必要があります。私に協力できることがあれば...」
「ああ」捜査責任者が頷く。「これから、貴方にはシステム解析チームのアドバイザーとして協力してもらいます。報酬は...」
「必要ありません」俺は遮った。「あの世界には、まだ大勢の人々が閉じ込められている。一刻も早く、救出の手を差し伸べないと」
部屋の端にある別のスクリーンには、ゲーム内の映像が映し出されている。広場で途方に暮れる人々。おどおどと先に進もうとする人々。そして、システム管理者を名乗る犯人からの新たな通告。
「残り時間は27日と...」誰かがつぶやく。
携帯が再び震えた。今度は別の番号から。
『貴方は、私たちの予想を超えていました』
目を細める。犯人からのメッセージか?それとも...
「解析班!この番号の追跡を!」
俺は席に着き直し、キーボードに向かった。スクリーンには次々とコードが流れる。これは、単なるゲームのバグハンティングではない。人々の命がかかった戦いが、始まろうとしていた。
---続く---
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