第3話 「イメージしやすいお題」にも注意。ネタ被りとスピード
今回からさっそく「お題」について触れていきます。
「お題で執筆!! 短編創作フェス」の第1回のお題は「試験」でした。
この「お題」ですけど、当然、イメージしやすい言葉は書きやすくて、そうでない言葉は書きにくいということになるかと。皆さんがどういった作品を書きたいかにも関わってくることなのですが、多くの人がイメージしやすい言葉というのは、「ネタが被りやすい」という問題があります。もちろん同じシチュエーション、同ような登場人物、同じような「オチ」であったとしても、人が違えば表現に選ぶ言葉も、文体、リズム(テンポ)も異なってきますから、違う作品になるはずです。
KACのように皆勤賞を狙うのであれば、他の方の作品のことを意識する必要はありませんから、似たような内容の似たような話になっても気にならないのかもしれません。ですが、読む側の立場だとその気はなくてもその似たような作品同士の比較が無意識下で行われてしまいます。
例えば、異世界ファンタジーものは、基本的には同じテンプレ展開(読者が望む)の中で、読者の読んだ作品経験との比較が行われているはずです(少なくとも卯月はそうです)。テンプレを外さずに書かれるわけですから、ある程度まではスイスイ進みますし、読者も安心して読み進めてくれるかもしれません。ですがその同じような作品間で大きな評価の差がついていきます。それが作者の力量差(テンプレの深い要素理解)によるものなので、真似ているだけでは未来永劫追い越せないし、追いつけない。有名どころの作者様が上位に居続けるその秘密に肉薄する努力が必要となります。
まあ、これは長編での話です。
前回書いたように、カクヨムの短編というのは、読者も作者も(ほんとうに)短いものを想定しています。下手に上限まで書ききって物語の整合性をとって納得感を与えるよりも、場合によっては途中で切ってしまい、読者の想像に委ねたほうが作品に対する期待感のほうが優先して、「気持ちよく」高評価をつけてくれるものです。エンタメ系の問題としては、完全に満足させて(お腹いっぱいにして)しまうのは悪手だと個人的には思います(ほどほどが良い)。
ですから長編においては、(昔から)延々と続く期待感で読ませる手法が存在します。作品全体をみるとかなり歪なものになっているのですが、リアルタイムでその作品を追い続けているファンにとっては理想的な状態です(これは書籍化の際に作品としては大きく改善される大手術が行われたりします。ですが書籍版よりWEB版の方が良かったなんて声もよく上がるアレだったりします)。
数千字しかない文字数の中で他の作品と似たような話になった場合、前に読まれた作品のほうが読者にとってはオリジナルとして認識されます。面白いと評価した場合は特にそうなります。つまり割り引かれた状態で読まれるので、同じクオリティでも同じ評価を得ることはできません。それを圧倒的な「文章力」でひっくり返せるのか? ネット小説で優先するのは見事な文章表現ではなく「分かりやすさ」です。「分かりやすさ」はある程度文章を書きなれたら、意識すればみなさん同水準まで到達できます(才能なんて必要ない)。
よくレビューで「とても読みやすい作品でした」というコメントを見るかと思います。あれって、おそらくガチの書き手は書かないフレーズかと思います(卯月だけ?)。逆に構成だとか、文章表現を強く書いているものは、(カクヨムの書き手という意味の)身内の評価です(稀に評論好きな読み専さまがいらっしゃるかもしれませんが、それは自分が書いたことがあるから自信をもって公開されるレビューに書ける言葉だと思います)。ブンガク? 文芸? 方面を志向されている作者さんはそちらの評価のほうが良いのかもしれませんが、それなら本職の方に見ていただく機会をお金を払ってでも作ったほうが、早く目的は達成されるのではないかと考えます。前回書いたように文学賞方面の文字数は(地方ものは別として)こんなに少なくはないので、「短い(?)」短編での評価はあまりその先の目的には関係しないのではないかとも思います。
ですから、ネット短編小説(エンタメ方面)での、同じネタの作品において優位性を得るのに必要なもののひとつとして『スピード』が上げられます(早いもの勝ち)。そんなものは本質的な創作の話ではないと思われるかもしれませんが、例えばそれまでに無かった新しい「テンプレ」を生み出した作者様は大きなチャンスを掴みます。チャンスなだけで一人勝ちできるとは言っていません。そのテンプレと呼ばれる構成は、ネット上の共有財産ですから(誰も「ざまぁ」展開の著作権?、独占権はありませんよね)、より速く読者に評価される作品を提供できた者が勝ちます。『スピード』も他の業界のお仕事同様、ネット世界では重要です。
この創作論は『お題』系短編イベントについての話ですから、KACのようにある時間に『お題』が発表されるものだと、生活スタイルによる有利不利が発生します。ですが、これは『お題』から同じものをイメージして書いた場合の話になります。であれば、【他の参加者と違う視点】で書くことができれば、その内容については「一番乗り」ということになります。
第1回のお題「試験」から、例えば学校のテスト、入試のような多くの人が書きそうなものに手を出した場合「レッドオーシャン」に漕ぎ出すことになるということです。これはKACのように同じ『お題』で1000作近い短編小説が数日の間に投稿される状況での話になります。今回の「 短編創作フェス」のように、見たところたいして数が出てこないイベントについては、読む方も『お題』のことを意識していなかったりしますから、違う発想で作品を書くということのメリットがさほどないのかもしれませんが、特に、来たるべきKACに向けては知っておいて良いことだと思います。
次ではそんな『お題』を軽く分析してみたいと思います。
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