見事にはまり込んでしまいました。
深淵の奥深くを覗き込んだ時のように、底なしのどろどろの感情がこちらを見つめているかのような。
抜け出そうとしても、意識すらはめ込んで、永遠にまとわりついてくる。
まさに「沼」……非常に強い、魔の力を感じられます。
まぁ、だからこそ「呪いには呪いをぶつけてぶっ殺すんだよ!」的な発想には思わず笑ってしまいましたが。
しかし、本作が本当に面白いのは、沼の持つ魔性の力よりも、登場人物たちのひどく汚れた、汚泥の様にドロドロした心理描写です。
表面上は真逆のキラキラした人物がそんな腐ったものを抱え、そして自分の生み出した汚泥でもがき苦しむ……実にヌメヌメとした臨場感があり、ぞわりとします。
ある意味では、人間のこういった負の感情こそが「沼」を「沼」たらしめているのかもしれません。
自分の重く暗い感情と「沼」を重ね合わせながら、本作品を読んでみてください。
きっとあなたも囚われることでしょう。
巳枇6丁目にある『沼』の噂を、あなたは
知っているだろうか…?
捨てたいと希ったモノを、永劫に沈め去る
沼の噂を。
人は誰でも二度と見たくないモノ、忘れ
去りたいモノ、そしてこの世から消して
しまいたいモノを抱えて生きている。
そんな昏い願望を叶えてくれる沼がある。
作者のミステリー・ホラーを紡ぐ手腕は
とても巧緻だ。しかも今回の物語は
満を辞して長編なのだ。つまり、伏線に
次ぐ伏線が見事に絡まり合っては最後に
又もや読者をして感嘆さしむる仕掛けが
用意されている。とはいえ、この作品は
一つ残らず読んで頭に残して置く事が
重要だ。その経緯があって初めて、はっと
させられ唸らされるのだ。
沼の噂を聞いた人達其々の事情。そして
件の沼の呪いに当てられたと思しき人々。
更には怪異を専門に調査解決して行く
特殊な人々の活躍。
何故、この沼は其処に存在するのか。
そして何故に、沈めたモノが消滅するのか
謂れや歴史、立地などにも人々の思惑は
絡む。二転三転、逆三回転半に捻りを加え
更に逆立ちで着地するぐらいに翻弄される
この作品、是非とも腰を落ち着けて
じっくり読まれるのがおすすめだ…!!