☆5 ギルドで試験を受ける
セレスティアの首都である「エルドラ」に向かう道中、広大な草原と美しい湖が広がる自然豊かな風景が目に飛び込んできた。
澄んだ空気と心地よい風が、冒険の始まりを予感させる。
徒歩での移動は少し疲れるが、その分、景色をじっくり楽しむことができた。
道中、色とりどりの花々が咲き誇り、鳥たちのさえずりが耳に心地よく響く。
時折、木陰で休憩を取りながら、自然の恵みである果実を摘んで食べたり、小動物を丸焼きにして食べたりして、腹を満たしつつ進んだ。
エルドラの街に入ると、石畳の道や歴史ある建物が並び、活気に満ちた雰囲気が漂っていた。街の中心部からすこし外れた場所に位置する冒険者ギルドに到着すると、その立派な建物が目に入った。
ギルドに登録したい旨を伝えると、受付嬢は俺の姿を見て少し訝しげな表情を浮かべた。どうやら、俺がガキすぎると思ったらしい。
登録するには実力試験が必要で、通常はS、A、B、C、Dの5段階のうち、Dからスタートするらしい。登録にあたり、名前が必要とのことで「ソウタ」と名乗った。
ダークエルフの里でよく分からない名前を付けられたが、しっくりこなかったので、前世のものに変更してもらったのだ。
続けて苗字も聞かれたが、ダークエルフには苗字を名乗る習慣がなかった。
俺は一瞬考え、これも前世と同じ「アマギ」にした。
受付嬢に案内されて試験場に向かうと、そこは小さな円形の闘技場のような場所だった。天井は高く、広々としているが、観客席のようなものはなく、少し殺風景な印象を受けた。
試験官を呼んでくるから少し待つようにと言われ、俺はその場で待つことにした。
暫くして、試験官と思しき中年の男性がやってきた。
彼は名前を名乗り、軽く自己紹介をすると、すぐに「君のマナの特性は?」と尋ねてきた。いや、知らんけど。むしろ俺自身が知りたい位なので、正直に「知りません。」と答えた。
試験官は少し驚いた様子だったが、「では判別式をやってみようか」と言って席を外し、金属っぽい何かを持って戻ってきた。
エレメンタルゴールドと言うらしい。
それに向けて自分のマナを当てると特性が分かるとか。
試験官の説明を受け、俺はその金属にマナを当ててみた。
……。
………………??
何も変化が無かった。
熱くも冷たくもならないし、光ったりもしない。
輝きも増したりしない。
マジかよ!と思って、その金属をつかんでみると、ぐにゃっとした。
ブヨブヨの柔らかい物体に変質していた。
「ん??これは何ですかね?」
俺は試験官に尋ねた。
試験官は少しうろたえながら、
「な、何だろうね、これは。こんな変化は初めて見たよ。特殊な何かなのは間違いないね」
と答えた。
試験官は金属を手に取り、慎重に観察し始めた。
眉間にしわが寄り、真剣な表情が浮かんでいる。
「君のマナは、非常に珍しいケースだと思う。私も試験官になって20年くらい経つけど見たことも聞いたことも無い変化だ。もしかすると、まだ解明されていない特性があるのかもしれない。」
あ、そうなの?
自分で解明するしかないってことか?
「とはいえ、君のそのマナの強さはちょっと常軌を逸してるレベルにあるね。それだけでAランク、いやSランクに匹敵するようなポテンシャルだと思う。君を指導できる人材がいるかどうか分からないくらいのね。」
試験官は驚きと敬意を込めて言葉を続けた。
その目には、俺のマナの潜在能力の大きさに対する畏怖が浮かんでいた。
「ただ、全く洗練されていない……。持て余してる感じがするよ。君のマナはまるで荒れ狂う嵐のようだ。君自身がその力を理解し、コントロールする術を見つけなければならないよ。」
試験官の声には、俺の将来を案じる真剣な思いが込められていたように感じた。
「とりあえず、こんなマナを持っていればあまり危険な目に遭うようなこともないだろうからAランクかな……。本来ならここで力を示してもらうところだけど、君の場合、コントロールできず、私が怪我してしまう恐れがあるので免除する。あ、ちなみにSランクは、どんなに強くてもAランクになってから実績を積まないとなれないから、君を過小評価してるとかじゃないので勘違いしないでね。」
「なるほど、分かりました。ちなみにAランクにはどんなメリットがあるんですか?」
「Aランク以上でしか受けられない依頼があるよ。その分、当然危険だけど、報酬もその内容に応じて金貨数枚レベルになったりする。Bランク以下だとせいぜい金貨一枚が上限だからね。」
金貨1枚って、銀貨百枚相当だから前世の日本で言うと百万くらいか?
それが数枚貰えるとなると、年に二~三回依頼をこなすだけで充分生活できるじゃん。
ということで俺は晴れてAランクの冒険者となった。
Aランク以上でないと足を踏み入れることができない場所もたくさんあるそうだ。
普通なら地道にコツコツとランクを上げていくところだが、俺は運良く一気に制限が解除された。
なるべく早く一攫千金して、のんびりとダラダラ、誰にも気を遣わず暮らしたい。
豪華な屋敷に住む必要はないし、贅沢をするつもりもない。
自分の好きな料理を作り、昼間は酒でも飲んで昼寝して、のんびりと過ごす。
ダークエルフの里でも十三歳くらいから吞んでたしな。
そして金が尽きたら、また新たな依頼を受けて、必要な分だけ稼ぐ。
そんな自由で気ままな生活を送ることを、とりあえずの目標としよう。
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