★2 ヴァルハリオン王立騎士魔導学院
鳴海が生まれた家はヴァルハリオン王国の中でも屈指の名門貴族ヴァルフォード家だった。
彼はアレクシスと命名され、7歳になった時にヴァルハリオン王立騎士魔導学院に入学することとなった。この学院は国中の王族や貴族の子弟が在籍する全寮制の学校であり、厳格な教育と訓練が行われる場所だ。
壮大で威厳ある建物。石造りの高い城壁が周囲を囲み、塔がいくつもそびえ立つ。正門には精巧な彫刻が施され、学院の紋章が掲げられている。
広大な敷地内には、緑豊かな庭園や訓練場が広がり、中心には荘厳な本館がそびえ立つ。本館の大きな窓からは、学院の内部が一望でき、夜には灯りがともり、幻想的な雰囲気を醸し出す。
普通の子供なら親元を離れることに不安や寂しさを感じるのだろうが、アレクシスは既に前世で高校生だったため、精神年齢的にはもうとっくに成人していた。
そのため、親元を離れることに何の問題も感じなかった。
むしろ、彼にとっては新たな生活の始まりであり、未知の世界への期待感が高まっていた。
この頃にはアレクシスは、自分が両親から多大な期待を受けている理由を明確に理解していた。彼のマナの輝きは他者のそれを圧倒的に凌駕しており、まさに異次元のものであった。
生まれた時から既に大人並みの力強いマナを纏っていたアレクシスは、奇跡的な存在であった。
ヴァルフォード家の人間は、アレクシスが持つこの圧倒的なマナを見て、彼が将来どれほどの偉業を成し遂げるのか、どれほどの存在になるのかを夢見ていた。
アレクシス自身も、その期待に応えたいという強い意志を持っていた。
入学するとまず、アレクシスはエレメンタルゴールドと呼ばれる鈍い光を放つ金属に自身のマナを当てる試験を受けた。この試験は、マナの特性を判別するためのものであり、学院における最初の重要なステップだった。この金属にマナを当てると、その特性が明らかになるのだ。
もし金属が熱を帯びたり水が浮いたり、青白い光が走ったりすれば、それは魔術の適性を示している。光の輝きが増す場合は、身体能力強化の適性があることを意味する。
また、金属の表面に何らかの模様が浮かび上がれば、それは召喚術の適性を示している。それ以外の反応が現れることは滅多にないが、その場合は分類できない特殊な何かということになる。
魔術適性のマナを持っていても、身体能力強化の道へ進むことも、またその逆も可能であるが、極めて非効率なため、通常は適性に応じたクラスに進むことになる。
アレクシスの番が来て、彼がその金属にマナを当てると、驚くべきことが起こった。エレメンタルゴールドは瞬く間にその輝きを失い、ただの鉄の塊になってしまったのだ。
周囲の生徒たちは息を呑み、教師たちは目を見張った。
これまでに見たことのない現象に、その場は騒然となった。
教師たちはこの異常事態に対処するため、急いで図書館へと向かい、過去の事例を調べ始めた。古い書物や記録を片っ端から調べたが、エレメンタルゴールドがこのような反応を示した前例は一切見つからなかった。
彼らは困惑し、アレクシスのマナが持つ特異性に対する理解を深めるために、さらに多くの資料を探し求めた。
この出来事は、アレクシスの持つ力がいかに特別であるかを改めて証明するものだった。そのマナは既存の分類に収まらない、未知の力を秘めていることが明らかであった。
教師たちは彼の将来に対する期待と同時に、彼の力を正しく導くための責任を強く感じることとなった。
アレクシス自身も、自分のマナが他者とは異なることを再認識したが、自分の力を恐れることなく、むしろその力を最大限に活かし、ヴァルハリオン王国のために尽力することを改めて決意した。
◆◆◆
学院生活が始まると、アレクシスは厳しい訓練と学びの日々に直面した。
広大な学院の敷地を歩くと、訓練場からは剣がぶつかり合う音や魔法の閃光が絶え間なく響き渡り、図書館では生徒たちが熱心に書物を読み漁っていた。
通常はその適性に応じて魔術か武術のどちらかのクラスに所属することになるが、アレクシスは特例としてその両方に所属することになった。
彼は朝早くから起きて、剣術の訓練に励み、その後は魔法の授業に参加した。
昼食後は休む間もなく、再び訓練場に戻り、夕方まで続く厳しいスケジュールを毎日こなした。
しかし、学院に入学してからの生活は予想以上に孤独なものだった。
当然ながら周りの生徒たちはまだ幼く、アレクシスの精神年齢とは大きなギャップがあった。それに加え、特別扱いされていることもあり、周囲からは幼い嫉妬や羨望の目で見られている。
自分の考えや感じていることを素直に話せる相手は誰もおらず、次第に孤立していった。訓練や授業が終わると、他の生徒たちは楽しそうにグループで過ごしていたが、アレクシスは一人、図書館に向かうことしかできなかった。
図書館での時間は、知識を深めるための貴重な時間であると同時に、孤独を感じる時間でもあった。最初は本の中に没頭することで紛らわせようとしていたが、やがて諦め、その孤独を受け入れることにした。
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