ともだおれ殺人事件

沼津平成

第1話 101号室の住民

 その夜も、『ホテル白原しろはら』の周りはほの白く光っていた。周りの路地は入り組んだビルに占領されている。全てブラック企業だ。窓から白い光が降り注いでくる。

 だが、その中でもぐんを抜いて光っているのが、この『ホテル白原』だ。フロントには数人の社員がいて、愛想なく部屋のかぎを渡している。

 エレベーターはいつでも混んでいる。空いていない時間を狙う客もあるが、そもそもそんな時間帯など存在しない。


                    *


 萩原氏波はぎわらうじなみは、つけひげが危うく落ち掛けるぐらいにんまり笑った。


「そうか。今日も101号室は安泰か」


 社員は丁寧ていねいにお辞儀じぎをした。

 はい、そうです、と一人がいった。礼の姿勢は四十五度を保っている。何人かは揺れている。新人だろう。緊張きんちょうで顔もこわばっている。


「まあよい。まあ、顔をあげて。101号室の鍵を渡しなさい。しばらく待つから」


 そういうとフロントのソファーにゆったりと腰掛けた。萩原はニヤリと笑った。

 次の瞬間——「バン!」

 と音が聞こえた。萩原がブッ倒れた。失神している。しかしころされたのは萩原ではなかった。彼に親しい二人の富豪よくばりである。

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2024年12月20日 05:30
2024年12月21日 05:30

ともだおれ殺人事件 沼津平成 @Numadu-StickmanNovel

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