第13話 Sクラス確定

 セリオンド王立学園のクラス選別トーナメントもいよいよ終盤に差し掛かる。


 ここまで勝ち抜いて来た俺は、残る四人の勝ち残った面々を見渡した。


 まず初めに目が合ったのは三雲であった。


 彼女は俺と目が合うと、軽い足取りで隣に並んでくれる。


「京太くんも勝ち残ってくれていて良かったです」


「転生者の特権に加えて、能力スキルがチートだもんな。それを30歳のおっさんが学生相手にしてんだから、負けるわけにはいかんよな」


「さきほども言いましたが、その全てが京太くんの実力なのです。恥じることはありませんよ」


「女神のような慈愛を感じる言い方をするもんだ」


「私の中には女神が封印されてるからでしょうね」


 一つ冗談を放つと、くすくすと笑い合う。


「ともあれ、ここまで残ればSクラスはまず間違いないと思われます」


「とりあえずの目標は達成ということだな」


 二人して安心しているところで、「ミクモ様。キョータ様」とエレノアがこちらの会話に入ってくる。


「私はどこまで勝てばよろしいのでしょうか?」


 エレノアが簡単に言ってのけるが、そのセリフは強がりなんてものではなく、彼女自身が強いから出る純粋な質問なのだろう。


「ミクモ様をけちょんけちょんにして良いのであれば、日頃の恨みを込めてやってやりますけども」


 なんちゅうことを言ってのけるメイドだ。あーあ、三雲も怒って睨みつけてるじゃん。


「あなた、私に恨みがあるの?」


「この間、私のプリンを食べたものですから」


 可愛い恨みだな、おい。


「何ヶ月前の話をしているのよ!」


 しかも結構前の話らしい。


「食べ物の恨みは晴れないのです。アーメン」


 あ、うん。このクーデレメイドの頭の中って、やっぱりアホなんだな。


「しかしですねミクモ様。あの方にはもしかしたら勝てないかもしれません」


 エレノアがえらく真剣な眼差しで向けた先には、青い髪の爽やか系イケメンが立っていた。


 こちらと目が合うと、ニコッと爽やかな笑顔を向けてくれる。その仕草や雰囲気は学生とは思えないほどに落ち着いて見えた。


「エレノアを唸らせるなんて、相当の手練れのようですね」


 エレノアの強さを信じているからこその三雲の言葉。


「確かにあの手のタイプは強そうだよな」


 転生者の特権を持つ俺とミクモ。そのミクモよりも強いとされるエレノア。自分で言うのもなんだが、俺達と同じ土俵に立っているのだから、実際に強いのは確かなのだろう。


「そこまでええええええええ!」


 観客席の中央の一番高いところ。学園長が座っていたところより、大きな声が響きたる。


 地上にいた俺達は、全員が天を見上げるように顔を上げた。


 しかし、そこには誰もいなかった。


「新入生諸君! ご苦労であった」


 声は地上から聞こえてきて、みんなが視線を下ろすと、1番のフィールドに学園長先生の姿があった。


「皆の実力は大いにわかった。初めにも言ったが、試合に勝った者が必ずしも上級クラス。負けた者が下級クラスというわけではない。じゃが──」


 言葉の途中で勝ち残った俺達四人の顔を見る。


「ミクモ・ヒイラギ。キョータ・ミカド。エレノア・ヴァルディエール。そして、カイ・アスフェルト。今年のSクラスはこの四人とする!」


 学園長の言葉の後、今まで試験管を務めてくれていた大人達が、パチパチと拍手をする。それにつられて新入生の半分程度は拍手をしてくれた。残り半分は納得がいっていないような顔をしている。


 そりゃ、勝った者が必ずしも上級クラスじゃないと言っているのに、早速とトーナメントに残った四人を一番上のクラスにしていたら、納得できないって奴も現れるだろう。だけど、これは全体的な試合を見ての判断だとは思う。


「今回のクラス選別には皆、思うところがあるかと思う。じゃが、それが今の皆の実力じゃ。少々残酷やも知れぬが、現実と、自分と向き合って学園生活を過ごして欲しい」


 まだ大人と子供の狭間をいく学生に向けて送る言葉としては、かなり辛辣ではある。


 だが、学園長先生の言っていること自体は特におかしいとは思わない。


 日本の社会と同じだ。


 これで這い上がる奴もいれば、腐る奴もいる。どうなるかは自分次第というわけだ。


「クラス替えは定期的に行う。上級クラスは慢心せず、下級クラスはどんどん上を目指してくれ」


 なるほど。こりゃSクラスだからって油断はならないみたいだ。

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