第13話『月光の森で炎は踊る 前篇』全9Part
Part1
――ヒューーーーーー……ボボンッ!――
「――合図だっ」
「火球が二つ……その答えはっ」
上空を見つめ、エドガーとアルメリアは顔を見合わせ。
「「対象を二つとも確認っ!!」」
対象とは、敵と人質の有無。
一つなら敵のみ確認、二つなら両方確認、三つならどちらも無し。
人質だけということは考えにくいため除外した。
エドガーとアルメリアは頷き合い、中央部……【月上間】の様子を見る。
ザワリと変貌する雰囲気に、エドガーも喉をゴクリと鳴らし、アルメリアは腰に備えた双剣の柄をギュッと握った。
◇
「なんだっ!!今の火の玉はっっ!」
「わ、わかりませんわっ!入口から見えた、火柱と同じか……それとも!」
コランディルは混乱していた。
岩陰で姿こそ確認できなかったが、この狼狽をみれば、あのアルメリアも冷静になれたかも知れない。幸いか、部下の二人はまだ冷静だった。
マルスは冷静に火球の方角を判断し、それが敵によるものだと決断。
コランディルを庇い立つように斧槍を構え、アルベールの首に刃を這わせる。
「……きっとエドが来たんだ。お前たちの犯行が、【召喚士】にバレたんだよ」
息を荒くしながらも、鎖で縛られたアルベールはコランディルを見上げる。
隣に縛られたメイリンは、心配そうにアルベールを見ていた。
「アルベールぅぅ!お前が呼んだのか……お前がぁ!」
「ぐあっ……!お、お前……何が、したいんだよっ……!!」
コランディルはアルベールの胸ぐらを掴み、持ち上げようとする。
鎖で縛られたアルベールの胴部がギギギ……と軋みを上げた。
アルベールは、コランディルの言動の不可解さに困惑する。先ほど自分で言った、『【召喚士】が目的』だと言う言葉すら、アルベールが呼んだと怒りを見せるには不自然だ。
「コランディル様。奥から来たようだぜ……しかし、【召喚士】ではねぁなぁ。女だぜ、ありゃあ」
「……ほう」
イグナリオ・オズエスの言葉に、コランディルはアルベールを乱暴に放す。
そしてコランディル一味は、【召喚士】ではない訪問者に対峙する。
赤く長い髪を風に靡かせ、赤き剣を持ったその見目麗しい女性に。
「……誰だ貴様は。その格好、貴族か……いや、違うな。この俺様が知らないわけがない。しかし場違いな服だ、ここをダンス会場とでも勘違いしているらしいぞ、お前たち」
「がははっ!どうせ
下品な仕草をしながら、女性……ローザの胸を見るイグナリオ。
揉みしだくような
一方でマルスは、ローザの少し後ろに立つ少女に視線を向ける。
「コランディル様、あれ……アルベールの妹ですよ」
「確かに、エミリアだったか……お前等と同じ【従騎士】だったな」
「ああ。成績は万年二位で、兄貴と同じだったはずだぜ」
同じ【従騎士】であるイグナリオとマルスは、エミリアを見て言った。
騎士学校時代の成績がよく似ていた兄のアルベールと比較し、嘲笑うように。
そしてその姿をようやく確認したアルベールとメイリンも。
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