Part2


 その姿を見つけ、アルベールは瀕死の身体ながらも驚愕を見せる。


「エ、エミリア!?……なんでっ!」


「どうしてエミリアちゃんが。それに、あの赤毛の女の子は……」


 助けに来るのはエドガーだと思っていたアルベールにとっての寝耳に水。

 しかももう一人は初めて見る相手だった。




 ローザはエミリアを横目に、先ほどの敵の言葉を。


「――馬鹿にされてるわね、キミ」


「知ってる!!」


 歩みを止めず、ゆっくりとコランディルたちの前に到着した二人。

 次の合図を出すために、まずは会話をと試みる。

 そしてそれはコランディルも同じだったようで、ローザを視界に入れ、余裕な口振りを見せる。


「おやおや、こんな場所にお客人とは。近くの村の娼婦かな?しかしその見事なドレス……とても平民が買えるとは思えないなぁ。盗んだか、俺様のような大貴族を誑し込んで、くすねた……とかかなぁ?」


「場違いですよねぇ、売女如きが……この方はコランディル・ミッシェイラ、【王都リドチュア】の大貴族、ミッシェイラ家の嫡男なのよっ!?」


「くくくっ、マジでデケェ胸だぜ……」


 ローザを身売りと決めつけ、コランディルたちは下衆い顔でローザを見ている。

 特にイグナリオ。その視線に覚えを感じ、隣で少し震えるエミリアに、笑いながら言う。


「キミと似たようなことを言ってるわね、あの男」


「……え、あ!!」


 思い出される数時間前……『おっぱいデッッッカ!!』。

 恥ずかしい台詞がよみがえり、エミリアは赤面しながら否定する。


「ち、ちち、違うじゃん!あたしの場を和ませようとした言葉と、あの下衆い男の言葉を一緒にしないでよぉっ!?」


 身振り手振りで否定する金髪の少女に、イグナリオを視線を刺す。

 しかしローザの軽口のおかげか、エミリアの力感が取れた。


「なら、違うってところを見せて頂戴。丁度、キミと同じ得物を扱う男もいるようだし」


 ローザは長身の男……マルスを見て言う。

 しかしその言葉は、自身を女と自称するマルスにとって禁句。


「今……男、って。そう言ったわね?……テメェ、ざけんなよ!!このクソアマァァァァァァッ!!」


 急に声を低く発し、ドスの利いた声でローザに叫ぶマルス。

 一番距離の近いアルベールですら、驚いているようだった。


「男じゃないどう見ても。それに、仮に女だったとしても、私には関係ないわね。それじゃ、任せたわよ」


 違う意味で豹変したマルスの激怒の叫びを聞いても、無関心のローザ。

 エミリアの肩をポンッと叩いて、イグナリオの方へ歩み出す。


「あんな状態で任せないで!?……あーもう!!やるよ、やりますよ!!」


 エミリアは持った槍の先をマルスに向ける。

 “石”の力はまで不透明。恐れるばかりでは駄目だと、自分の心を奮い立たせた。

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