Part8
それは、今戦うのは自分だという意思表示。
戦う術を持たないエドガーの代わりに、自分が戦うという宣言だ。
そしてそんなエドガーがやらねばならない役目とは……。
「――僕が、アルベールとメイリンさんを助けます」
茶髪の奥の黒い瞳に、意思を
戦闘は任せるしかない。ならば、その他は自分がやらねばと思っていた。
「あたしだって!」
槍を持つ手に力を込め、エミリアもやる気を見せる。
「無理しなくていいわよ。震えているじゃない」
「そ、それはっ」
ローザは、どうやら端から戦力としては数えていないような口振りだった。
それは姉のアルメリアも同様で、【聖騎士】と大層な名前ではあるが、ローザのような異世界……特に戦乱に満ちた世界からの人間からすれば、尚更だろう。
「キミ、準備はいいわね?私が敵の注意を引き付けるから、救出優先……いい?」
「はい、そちらは頼みますっ」
「……
「ちょっ、姉さん!?あたしたちが戦わなくちゃ……」
エミリアはあくまでも、コランディル一味と戦う気でいたらしい。
しかしアルメリアは冷静か……それとも。
そんな姉妹の不一致を感じたローザが、エミリアの肩を掴み。
「なら、キミは私と一緒に来なさい。怖くなったら下がればいいわ、実践あるのみよ」
ガッ――と掴まれたエミリアは、引き摺られるように。
行きたくないのではなく、姉の尻込みしたような台詞を追求したかったのだ。
「さぁエド、
「アルメリア……うん。わかった」
表情だけは真剣そのもの。
しかし戦いへの恐怖だけは、一朝一夕で克服できるものではない。
アルメリアの心に内包される逸話やおとぎ話の伝承が、アルメリアの心を、恐怖として掴んでいたのだ。
◇
ローザに掴まれるエミリアも、姉への苛立ちを見せているが、それは自分を奮い立たせる方便でもあった。
そしてそれはローザも理解している。しかしローザとしては、一番の優先はエドガーからの願いの成就。幼馴染と従業員……この二人の救出だ。
正直な話、例え【魔石】が関わっていようとも、自分の敵ではないと踏んでいる。
「ローザもなんか言ってくれてもいいじゃん!!」
「私が何を言うのよ。戦力にならないことを自分で認識している……それだけでも周りが見えていて偉いじゃない。戦争なら、それも立派な能力のうちよ」
「それは……」
自分の力量を推し量ることもできない新兵が無惨に散って行く様を、何度も見た。
命に変えられる物など、一概には上げることはできない。だからこそ、アルメリアの選択を臆病だと言うつもりはローザにはない。
それに、それだけではないという認識もある。ローザはそれを思いながら、アルメリアを見ていたのだった……。
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