Part7
ロザリーム・シャル・ブラストリア、愛称ローザと名乗った少女は、【剣と魔法の世界】から召喚された。
その世界は戦乱と策謀に塗れ、三種族の争いによって世界各地を混沌と化していた。人間、天使、悪魔。三竦みだった情勢は、天使の一人が人間側へ寝返ったことでその均衡を破りさり、最終的には天使と人間が協力し、悪魔を地底に追いやる形で決着した。
「――ふっ!!」
――ザシュ!――
赤き剣を振るい、魔物を屠るこの少女こそ、天使によって、崇められる立場にのし上げられた人間の一人……それが、ローザだった。
【ブラストリア王国】第一王女、ロザリーム・シャル・ブラストリア。
彼女は幼少から類まれなる身体能力と知性を持ち、国民からも麗姫として敬われ、国を担う存在として広く知られていた。
「はぁぁっ!」
――ゴォォウッ!!――
炎を自在に操る力……それこそ、このローザの真骨頂。
どんな相手も消し炭にしてきたこの力が、何を言おう……彼女を魔人として称えることになった力の象徴、証明。
そして……彼女を世界から拝する原因となった、悍ましき力でもある。
「そろそろねっ、キミたち……準備は?」
「僕は平気です」
「
「うん。大丈夫だよ」
ローザは最後の【
エドガーに連れてこられた形の姉妹二人の顔色は優れない。
この先に兄を拉致した犯人がいる可能性を考えれば、当然か。更には魔物などという未知と遭遇し、精神も疲弊していることだろう。
これが普通なのだ。今まで平穏に過ごし、騎士とは言え実践経験はない。ローザにしてみれば、姉妹も他の人間も、同等の感覚の持ち主と捉えているだろう。
「そう、ならいいわ。“石”の気配は三つ、大きいのが一、小さいのが二。おっと、随分と雑魚が減ったわね……」
エドガーの【従魔】が奮闘しているからだ。
ご褒美という目に見える報酬がぶら下げられたことで、やる気に満ちていた【従魔】たち。ローザ的に言わせると、「面白そう」だった。
「エド、あれを御覧ください」
「うん……大きな岩があるね。あの影にいる可能性が高そうだけど、姿までは見えないな」
「でも、岩に鎖が見えるよ。森の中を移動して裏手に回れば見えるんじゃない?」
(へぇ、さっきよりは幾分マシになったじゃない。怯えて小動物みたいだったのに)
三人はしゃがみ込み、草木の隙間から中央部の様子を見ている。
ローザは視線を移し、特に姉妹の変化を感じ取った。
「確かこの場所、【月上間】だったかな……夜間は月が真上に見えるっていう」
「ええ。
夕刻の時間帯、まだ月は真上には見えない。
しかし日も傾き、時刻も刻々と過ぎている。
「ねぇキミ。自分の役目は、わかっているわよね?」
「え。あ……はい、勿論ですっ」
ローザは剣を見せつけるように、エドガーへ差し向けた。
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